※完全パラレル
※ホラーチック
目が覚めると、大きなベッドの上に寝転がっていた。ずきずきする頭を押さえつつ起き上がると、自分がいるのはさっぱり見覚えのない部屋だった。着ている赤いシャツと黒いズボンも、私物とは違う。窓の外はしとしとと雨が降っていて、木ばかりの景色はまるで知らないものだった。
「ここは、どこだい?」
そう言ったところで返事などない。恐る恐る部屋のドアを開けると、広々した廊下が広がっていた。周りを見渡して、誰もいないことが分かると足を踏み出した。本当にここがどこか分からないのに、何故か恐ろしさがない。心臓は波打つことなくただ静かに定期的なリズムを保っていた。
「誰か、いませんか」
そう声を出して廊下を進む。おかしなことに、ドアが先ほどの自分の部屋以外一つもない。と、階段に行き当たった。下りようと足を出すと階段がぎしりと音を上げた。こつこつと階段を下りていくと、ドアがあった。ノックをしたが何も反応がなかったので、勝手に開けてしまった。古ぼけたドアは意外とすんなり開いた。
「誰?」
声がして、そちらを向くとオレンジのバンダナをした活発そうな少年がこちらを見ていた。やはり鼓動は別段速くならないままだ。少年の目がぱっちり大きくなり、それから薄い赤色の唇が「なんだヒロトか」と無感動に発した。目のきらきらした輝きがすうっと引いている。
「君は俺を知っているのかい?」
そう言うと、少年は一瞬だけ顔を強張らせた。それからにいっと悲しそうに笑った。目の下にうっすらと赤みが見える。
「そうか、ヒロト…基山、ヒロトか」
彼は俺の方に近付くと、着いてきて、と小さく呟いた。よく分からなかったがとりあえず頷く。彼は自分を円堂と名乗ると、さくさく階段を上っていった。
「俺とお前は親友だった」
円堂君がぽつりと言う。俺が不思議そうにしていたのが分かったのか、彼はまた口を開いた。
「同じサッカーチームだったんだ。俺はキャプテンをしていて、ヒロト、ああお前だ。お前は俺を支えてくれてたよ。」
円堂君は白い壁を叩きながら歩いていく。しかしこんこんと音はしなかった。円堂君俺のいた部屋の前で立ち止まってこちらを見た。開けろ、という意味らしく、俺はそれに従った。部屋に入った円堂君は「クローゼット」と言って部屋の隅を見た。確かにそこには大きなクローゼットがあった。そこに近寄りクローゼットに手をかける。中には服が一枚も入っておらず、ただぽっかり黒い穴が入っていた。
「入ってくれ」
円堂君が首を少し傾げて、悲しそうに言った。俺は頷いてその通りにする。クローゼットからは道が続いていた。火をつけた蝋燭を持っていけ、円堂君が言った。
「下を見て」
しばらく道を行ったところで円堂君が耳元で呟いた。ふっと下を見ると、骸骨が横たわっていた。白い頭蓋骨にはほんの少し赤色の何かが付着している。そんな悲鳴を上げてしまいそうな場面なのに、俺は声さえもださなかった。
「それ俺の死体」
けろりと呟いた円堂君を見ると、彼は泣いていた。それから俺を見ると、ふっと口角を緩めた。ぞっとする様な笑顔だった。
「お前が、いや吉良ヒロトが殺したんだよ」
なんてことを、そんな言葉が喉で引っ掛かった。
(俺は、円堂守を、殺したらしい)
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※補足
二重人格なヒロトさん
吉良死亡後吉良家に引き取られる→数年後自分が吉良ヒロトにそっくりなことを知る→吉良人格覚醒→数年間吉良人格→吉良人格が円堂に惚れる→円堂を殺害→吉良人格沈静→円堂が化けてでる
中二ですみません
そして補足がないと分からないという