高鳴る心臓が煩い



「円堂を!?」
風丸がシェイクのストローから口を離し、心底驚いた様に目を丸くした。今俺は『キャプテンのことを知るなら幼なじみから聞けば?』という士郎の提案に乗って、風丸に円堂への気持ちを話したところだ。風丸はしばらく黙っていたが、小さく微笑んだ。
「何か弟に彼女が出来るような…複雑な気分だ」
「誰が弟で誰が彼女だテメー」
そう言うと風丸は、悪い悪いとおどけた様に言って手を軽く振った。
「…で、どこを好きになったんだ?」
風丸がワクワクした様子で尋ねてくる。恋愛話が好きとは顔も性格も女子かお前は。口には出さないが。
「…全部」
そう言って顔を反らすと同時に爆笑する風丸の声が聞こえた。情報を教えてもらうのでなければ、今頃風丸を殴っているだろう。
「いや、でも本当、なんか安心した。親の気分だ。」
風丸は笑ったために真っ赤になった顔でそう言った。
「円堂は昔から男っぽかったからな」
そう呟くと昔を思い出しているのか、風丸はくすりと笑った。
「小学校に入ったばかりの時に5年生にいじめられてた同級生助けたりとか。5年生三人と喧嘩して勝ってた、まあ本当は暴力嫌いらしいが。」
「えっ」
「6年生のバレンタインはクラスの誰よりもチョコもらったりとかな。」
「えっ」
さらりとした語り口に似合わない円堂の経歴に、驚いたが何となく納得した。円堂ならやれそうだ。
「そんなだから一時期は『キングコング女』ってあだ名もつけられてたなあ」
懐かしい、そう呟く風丸は本当に保護者のようだ。
「だからさ、円堂は女子扱いされるのに弱いんだよ」
にいっ、と風丸が歯を見せる。それから「頑張れよ」と言って頭をわしわしと撫でられた。その感じが士郎に似ていて、なぜだかほんの少しだけ安心した。




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