緑川にキスされた。つい5分前に。いっておくが俺と緑川は付き合っている訳ではない。俺は緑川のことがずっと好きだったが。しかしつい5分前まではただのチームメイトのはずだった。俺と緑川はそんなに近い距離でもないし遠くもなかった。緑川のどこを好きになったかと聞かれれば答えに詰まる。べたな話だが、多すぎて言えないというところだ。彼の目が好きだ。ほんの少しつり目で、サッカーボールを追う目はつるりと輝いている。彼の髪の毛が好きだ。動く度にまとめられたポニーテールが揺れて、またさらりと元に戻る。彼の手が好きだ。程よく焼けた肌はユニフォームとあった色だと感じる。彼の声が好きだ。声変わりをしかけの心地好い声。彼の性格が好きだ。いつもからからと明るい風に笑っていて、けれど隠れて努力しているところ。紛れも無く、自分は緑川に恋をしているのだ。彼をいつも横目で追っている。緑川が笑うと、体が動かなくなって、背中から首にかけてがぶわっと熱くなる。緑川に「円堂」と呼ばれた瞬間に、自分の名前がひどく特別で美しいものに感じる。彼と肩がぶつかると、肩からじんわりと何かが広がる。温かいような冷たいような、よくわからない何か。緑川のことをぼんやり考えながら眠る夜は、うとうとした意識の中に柔らかい優しい睡魔が、俺の頭へゆっくりゆっくり入っていく。次第に重くなる瞼をこらえながら布団に包まって夢に落ちていく。俺はそんな気持ちの良い眠りが愛しかった。また、夢に緑川が出てくることは珍しくない。夢の中でさえ彼はいつも笑っていて、起きる度に彼が近くにいないのを認識しては泣きたくなったりした。正直自分がこんな風に少女マンガの様なことをしているなんて信じられない。似合わないとも思う。寧ろ風丸に「弟みたいだ」と言われ続け、幼稚園の時はおとこ女と呼ばれた俺に合う訳がない。まあ話は元に戻るが、とりあえず俺は緑川にキスをされた。普通に試合のことについて話していて、突然顔が近くなったと思ったら唇が触れた。そのあと緑川は何かを言っていたが、頭が真っ白になって聞いていなかった。真剣な顔になってそう言った緑川がやけに頭に張り付いて仕方ない。とりあえず緑川が去ってからの5分間、俺はぼんやりここに立ち尽くしている。足に根がはったみたいに動かない。唇がだけの感覚が研ぎ澄まされて、じんじん熱を孕んで痛んでいる。ふらり、と漸く足が動いた。頭がぼんやりとしたまま、足はくらくら宿舎の自分の部屋へと進んでいく。途中誰かとすれ違っても「よお」と力無く言うしか出来なかった。ドアノブに手をかけると、かちゃりと音をたててドアが開いた。ベッドに俯せると、ごちゃごちゃした頭が一瞬にして空っぽになった気がした。ぱちぱちと瞬きをする。すぐに瞼の裏に緑川が浮かんできた。緑川がなんであんなことをしたのかが分からない。彼のキスは、唐突だった。予感なんてものはなかった。俺と緑川は昨日まで、円陣を組んで笑いあっていた中なのに。
「はああ…」
大きなため息が出た。驚いた、うれしい、色んな感情の混ざったため息だ。今緑川はどうしているのだろうか。俺と同じようにベッドに寝転がっているのだろうか。
「…はあ」
もう一度ため息をつく。彼は、俺のことが好きなのだろうか。そのことを考えると頬に熱が集まっていく。起き上がって、ちらりと自分の足を見た。練習で多く傷のついた足はかさぶたがあり、とても女の子の足といえるようなものではない。そんな自分を好いてくれているとしたら、口元が緩まるのが分かって、胸のあたりがぐっと痛くなった。

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よよ様
→はじめまして〜!!こんばんは。小説いつも読んで下さって…本当に有り難く思っています。上手だなんてぎゃばば!アツ円連載、コピペネタ、にょたは完全に趣味です^▽^ 円堂さんがいれば世界は平和!全くその通りですよね!リクエストの緑♀円すごく楽しかったです!しかしなんか緑川くんが終始空気な上に爽やか恋愛小説じゃなくてすみません…orz緑♀円大好きなのに…\^o^/精進します…。更新がんばります!リクエストありがとうございました!


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