ヒロトと仲良くなる前のことを思い出してみる。彼はいつも穏やかに笑っていて、優しい口調で俺に語りかけた。にこにこと緩まった口が綺麗に形を作って「ま」「も」「る」と音を発するのが、結構好きだったりした。本当に穏やかな奴だと思っていたのだ。周りからほんの半歩退いて物事の成り行きをのほほんと見守る。青白い肌は彼をいっそうひ弱に見せて、細い体もまたそうだった。だから今のように仲良くなる前は、彼をほんの少しだけ頼りなく思っていた。いいやつだが病弱そうだなあとも思っていた。正直あの時の自分に教えてやりたい。実際は真逆だということを。

「今どんな気分だい?」
ヒロトはそう言ってにやりと笑った。穏やかさとは無縁な厭らしい笑みだ。彼は俺に跨がって、俺の舌を掴んでいた。どうしてこうなったのかは頭の中がまだ整理出来ていないので分からない。よし、思い出そう。まず俺は今日ヒロトと一緒に帰っていた。それこそ楽しくきゃっきゃうふふと話していた。そうそう、そこでヒロトが「うち寄ってかない?」って言ったんだ。断る理由もないし「いいぜ」って言って、それでヒロトの部屋に入った瞬間に押し倒されてこうなった。ああ思い出した。頭を思いっきりぶつけたからまだずきずきする。それにしてもヒロトはものすごく楽しそうだ。
「ねえ、どんな気持ち?」
知らねえよと言ってやりたいが、舌を掴まれて話すことが出来ない。ヒロトの指は俺の唾液でぬらぬら光っていた。
「ああ、ごめん話せなかったね」
ヒロトがぱっと指を離した。舌は少し乾いていて、何だか気持ちが悪い。混乱した頭ではこの状況をどう打破するかなんて思い浮かばず、ただぼんやりヒロトを見るしか出来なかった。ヒロトが俺の唾液がついた指をぺろりと舐めた。背筋がぞくりとして、鳥肌がたったのが分かる。
「言えよ」
ヒロトが笑う。だが目はちっとも笑っちゃいない。彼は俺に何と言ってほしいのか、分からない。
「離れろよ」
とりあえずそう言うと、ヒロトはすうっと立ち上がった。やけに素直だな、と頭の片隅で思いながら起き上がろうとした瞬間、ヒロトの足が僅かに上がった。どす、と音をたててヒロトが俺の手を踏んだ。思いっきり、といってもいい。
「いっ…!」
痛すぎて声が出なかった。ヒロトは無表情で足をぐりぐりと動かしている。その度に俺の手に鈍い痛みが走った。
「ね、円堂くん。君最初俺のことひょろっちい奴だと思ってたでしょ。」
ヒロトがそう呟いて俺の目を見た。それからきゅっと目を細める。
「あれ、演技なんだ。」
騙された?とヒロトはにやにやした。足は相変わらずぎゅうぎゅうと手に圧力をかけてくる。痛みでついに涙がぼろりと出た。
「円堂君に油断して欲しかった。さっき押し倒した時の円堂君の顔といったら!写真でも撮っておきたかったなあ。最高に可愛かったよ。」
こんな奴に、っていう顔がね。饒舌に話すヒロトは俺が知っているヒロトではない気がした。こんなのヒロトじゃない。ヒロトはもっと優しくて、笑顔で、俺の友達じゃないか。
「ああその顔ムラムラしてきたなあ。ねえ、犯していい?」
ヒロトがそう言った。こちらに抵抗する術がないのを知って言っている。にやつくヒロトの発言に肌がぞわぞわ粟立った。俺とお前は、友達じゃあ、ないか。
「ヒロト、お前、俺が好きなのか」
恐る恐る尋ねてみる。どんなに酷くても他の答えを期待していた。願わくば友達に戻りたかった。
「うん」
そう言っていつもの笑顔で笑うヒロトを見て、生まれて初めて神に祈った。

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帆舵様
→こんばんは〜^▽^一万打お祝いの言葉もありがとうございます!訪問ありがとうございますーっ!その上リクエストまでして頂いて…!小説が素敵だなんて本当に嬉しいお言葉です!新たな萌え…新ジャンルマイナー円堂受けですね\^o^/頑張ります リクエストの方ですがこんなんですみませんorzドS攻め好きなので張り切ったのですが空回りでした…。修業します!リクエストありがとうございました!



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