「そしたらね、佐久間君が」
ヒロトがそう言った途端に、なぜかハッとした。よく考えれば佐久間は、同じチームで、仲間で、しかしあまり関わったことはない。今の話ではヒロトと佐久間は意外と仲がいいようだ。だが佐久間と俺の仲、といえば微妙なものだ。別に仲が悪い訳ではない。普通に話したりもする、といっても大概鬼道も加えての三人でだが。そう考えると二人で話したことなど数える位しかない。もしかしたら、何かと佐久間が噛み付く不動の方が、彼とたくさん話しているのかもしれない。恐らく彼らの仲はそんなに良好ではないだろう。そこは今後の問題だな、なんてキャプテンらしいことを少し考えて、話が脱線していることに気が付いた。目の前の美味しそうなカレーを口に含み、先程から何やら話している吹雪とヒロトに目を移した。
「鬼道さーん」
すぐ後ろから声がして、思わず肩が大きく揺れた。振り向くと、佐久間が驚いた様にこちらを見ている。
「どうした?」
「あ、や、びっくりしただけだ」
佐久間は少し笑って「悪い」と言うと、鬼道のところへ行った。華奢に見える背中が意外と広いことに気が付いた。

「はい、じゃあお願いしますね。お釣りはお小遣です」
そう言って母のような春奈から渡された可愛らしいプリントのメモには、色々な雑貨の名前が書かれていた。俺は”第三回重いものは野郎が運びやがれ買い出しじゃんけん大会〜サザエさんで鍛えたこの腕なめるなよ〜”で負けて、スーパーに買い出しに行くところだった。…同じく負けた佐久間と。
「んじゃさっさといこうぜ」
佐久間はそう言うと、ジャケットを羽織って、すたすたと歩き始めた。その動きに合わせて綺麗な白い髪がふわふわと風に揺れている。いつもより急ぎ足で歩きつつ、隣の佐久間を横目で見る。綺麗な褐色の肌に長い睫毛に覆われた目を見て、彼はかなり整った顔立ちをしているなと改めて思った。女みたい、と誰かが言って暫く不機嫌だったのでそれは言わないが。俺と佐久間の間に会話はなかったが、なぜだか気まずくはなかった。佐久間もそうだったのか、鼻歌のようなものを歌っている。佐久間の歩く速度が速いのか、スーパーにはあっという間についた。

「うーん、こっちのが安いか…」
スーパーの中、佐久間はまるで主婦の様だった。腕組みをしたまま商品を見てぶつぶつ言い、たまにこちらを見て「どっちがいい?」と真剣な顔で聞いてきた。それがおかしくて笑うと、「もういい!」と怒ってまた商品を漁るが、暫くするとまた「どっちがいい?」と聞いてきた。その様子を見て、今までの佐久間のイメージが何となく変わった。怖そうとかクールだとか言われている佐久間の、こんな一面が見られるなんて。それに二人でこういう風に話すのも初めてで、何となく体が浮きそうなくらい嬉しくなった。
「よし、これでいっか」
佐久間がそう言ったのは30分程経った頃だった。カゴの中はすっかり一杯になっていて、少し苦笑した。
「んじゃあ買ってくる」
何を言う間もなく佐久間はレジへ向かった。よくよく考えれば俺はここに来て何もしていない。荷物は重い方を持たなければな、とうんうん考えている内に、佐久間は大きな袋を二つ抱えてこちらにやってきた。
「あ、重い方持つぜ」
そう言うと、佐久間はほんのちょっとムッとしたように「いいよ」と袋を渡してきた。見かけからして佐久間の持っている袋の方が重そうだ。「俺力あるし持つぜ?」ともう一度言ったが、佐久間は「いい」と頑なだった。
「あ」
佐久間が声を上げる。視線の先にはアイスコーナーがあった。
「佐久間食いたいの?」
「ん、ちょっと。暑いしな。」
佐久間が先程の買い物の釣銭を確認しながら、ちらりとこちらを見た。釣を見る限り一人分のアイス代はあるが二人分はない、という感じだ。
「俺はいいぜ」
そう言うと、佐久間の顔が一気に華やいで、少し驚いた。佐久間はうきうきとアイスを選び、俺に何度も礼を言った。またも意外な一面だ。佐久間は支払いをした後、袋からアイスを出して、がりりとかじった。ソーダ味の空気が周りに広がった。
「一口食う?」
佐久間がそう言って笑う。優しい笑みだと思いながら、アイスを一口かじる。アイスはしゃりしゃりと歯の上を転がった。
「うまい」
佐久間のことと、アイスの美味しさと、今日は色々なことを改めて学んだなと思った。

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ゆっきー様
→こんばんはー!お久しぶりです^▽^10000打お祝いの言葉もありがとうございます!リクエストの佐久円、無駄に長い上に意味が分からなくてすみません…^▽^5000打の時も調子に乗っていましたが今回も調子に乗りましたすみません。少しでも佐久円っぽければ幸いです!癒されているだなんて…そんなゆっきー様に癒されます(´∀`)更新がんばります!リクエストありがとうございました!


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