薬のない病にかかりました



初めて見た瞬間、体に電撃が走った様な感覚に襲われた。兄弟揃って寒さに震えていたところに止まったバス。そこから出てきた奴に、一目惚れしてしまいました。

「え?」
士郎が眉を潜めて耳をこちらに近づけた。馬鹿にしている様な態度に腹が立って耳に息を吹き掛けてやると、黙って殴られた。相変わらずの容赦のなさに言葉も出ない。外見があれだけ柔和なのだから、中身ももう少しくらい優しくなったっていいものなのだろうに。
「だから、好きになったんだよ」
「……誰を」
「さっきの奴」
そう呟くと、士郎は溜め息をついて苦笑した。口から漏れた息がキラキラと白く光っている。
「あのさ、さっきの子って男でしょ?」
士郎が俺の肩にぽんと手を置く。何だかイラッとして、強く肩を揺すって手を退かした。
「は?女だろ」
そう伝えると、士郎は一瞬目を丸くしてぶつぶつ何か呟きながら俯いてしまった。こういう時の勘は俺の方が当たると知っているからだ。(まあ勘も何もさっきの奴は明らかに女だったが)
「うっそぉ…あんな男前な女の子っているんだね…」
士郎はそう呟くと首を傾げた。確かにいつも士郎に差し入れする女子の中にあんなタイプはいない。皆可愛らしく着飾り、柔らかな印象の女子ばかりだ。しかし先ほどの円堂守は違った。漢とかいておとこと読む、そんな印象だった。士郎が不思議がるのも無理はない。俺だってあんなタイプは初めて見た。実のところは好みストライクだった俺は、同性愛者のケでもあるのだろうか。
「恋、恋かあ。いいなあ、いいねえ。」
爺さんみたいな言葉を呟きながらにやにやしている士郎は、少し気持ち悪い。
「そうだね、うん。アツヤの初恋だし応援してあげるよ。」
口角を上げて、少し意地悪そうに士郎が笑った。そりゃどーも、と言うと士郎は俺の背中を叩いた。正直痛かった。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -