※同じ高校設定

秋にはなったが、まだ茹だる様な暑さが続き、皆が机へ突っ伏し始め、円堂は休憩時間に「サッカーやろうぜ」とは言わなくなった。代わりに円堂は涼しい図書室へ移動し、興味なさそうに本をめくっている。半袖からすらりと伸びた腕は綺麗に焼けていた。
「こんな暑さじゃ部活も出来ねえよ」
ぼそぼそと小声で話す。本の整理をしていた図書委員の奴が一瞬こちらを見たが、また直ぐに整理をし始めた。
「そこは気合いだよ」
円堂はそう笑うと、時計を見て席を立った。そして「また部活でな」と言い、図書室を後にした。手を振って円堂を見送った途端に眠気が襲ってきて、冷たい机に頬をつけて目を閉じる。なぜか心臓がどきどきしていた。いつもと変わらない筈なのに、何だか違う気がする。しかしそれが分からずに頭の中はごちゃごちゃと混乱したままだ。きっとこのまま考えてもどうにもならないので、睡眠をとることにする。もう次のつまらない数学の授業はサボることに決めた。

「あっ、ちぃー…」
部活が終わったのは、いつもより少し遅い7時前だった。監督の終了の合図を聞いてすぐ、タオルで顔の汗を拭った。身体がじんじん熱く、体温が高ぶっているのが分かる。汗を染み込んだシャツが肌に張り付いて気持ちが悪かった。ふと空を見上げる。薄暗い空に浮かぶ太陽は沈む寸前で、夜という時間帯には少し相応しくない。これも今年が異常気象だからだとニュースで言っていた。ぱん、と肩に少し強い衝撃を感じる。それから直ぐに円堂の笑い声が聞こえた。
「お疲れ、ラーメン食べてかないか?」
「おう、いいぜ」
「いいねえ」
ふと横から声がして、そちらを向く。いつの間にかいたヒロトが楽しげにそう言うと、やはりいつの間にかいた風介も頷いた。俺味噌ラーメンにしよー、と嬉しげに笑う円堂の頬を、つるりとした丸い汗がつたっていく。その汗にはもう一部しか見えない太陽が映っていて、昼に感じたのと同じ様に胸にじんわりとした熱さを感じた。

「ご馳走様っ」
一番食べるのが速かったのは円堂だった。円堂が水を飲む度に、余り大きくない喉仏が上下するのが見える。俺もスープを飲み干すと、手を合わせた。
「早く日曜にならないかな」
円堂はにこにこして俺を見た。相変わらずのサッカー馬鹿は、早く一日中練習がしたいらしい。
「…にしても、私達はもう半年も一緒にサッカーをしているんだな」
風介が言って、ヒロトが微笑んだ。ぴしり。俺の脳が停止する。二人ともそれはそれは嬉しげで、円堂もまた幸せそうだった。けれどもその時、俺一人、呆然と動けなくなってしまった。もう半年も過ぎてしまった、そのことに漸く気がついたからだ。
「…南雲?」
円堂が不思議そうに首を傾げた。慌てて「何でもない」と言って、手洗いへと立った。ドアを閉め、その瞬間溢れ出した涙に自分で驚いた。手をぼたぼたと涙が濡らしていく。自分でも何がなんだか分からなかった。
「あと、5回か」
そう言った自分の声は掠れていた。この半年分は、あとたったの5回しかない。あと二年半すれば自分と円堂は離れてしまう。体の力が無くなり、その場にうずくまった。涙はまだ出ていて、制服の袖を濡らす。この半年は本当に楽しくて、短かった。それだけの時間しか、自分は円堂といられないのだ。
「馬鹿だ」
まだ涙は止まらない。水色の清潔気なタイルに涙がぽつりと落ちていく。この時間さえも過ぎていって欲しくないと、心から思った。

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青田様
→はじめまして栗ーむ。です。10000打お祝いの言葉もありがとうございます!><作品が好きだなんて言って頂けて、本当これ以上の褒め言葉はありません。南円私も大好きです!!← 南円高校生リクエストとのことでしたが、南雲の唐突な女々しさまじ100%ですみませ…\^o^/仲良く?高校生をやっているかどうかさえ…\^o^/しかもシリアスさも微妙とか本当表現力のなさが明らかですね…!!
応援もありがとうございます本当にうれしいです!!リクエストありがとうございました!


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