これの吹円の派生

目が覚めると、土の匂うがする地面に寝転がされていた。そして、先ほどの出来事が一瞬にして思い出される。がばりと体を起こすと、周りは緑豊かなどこかの森だった。まだハッキリしない頭で自分が今どんな状況にあるのか考える。それと同時に頭のどこか冷静な部分が、必死に念仏を思い出そうとしていた。
「士郎も趣味悪いよな」
少し遠くから鈴の様な声が聞こえて、慌てて寝たふりをした。心臓がどくどくと五月蝿い。誰かが自分に近付く気配がして、ふわりと香の匂いが鼻孔をくすぐった。
「こんな男、しかもちんちくりんのどこがいいんだ?まずそうだ。」
何かが自分を覗きこんだ気がした。もう一つ、何かが笑う声がする。
「アツヤみたいに食べることばかりを目的にしてないからね」
くつくつ、笑う一人に対してもう一人が怒った風に、何か獣のような唸り声を上げた。心臓の動きが速くなる。汗がじんわりと背中を伝っていった。
「この子は僕のお嫁さんにするよ」
「「え?」」
思わず声が出て、何かの声と重なった。しまったと思ってももう遅い。目を開けると、けらけらと笑う狐の耳を生やした少年二人が見えた。
「気に入ったから、君は今日から僕のところに嫁入りしてね。」
やっと思い出した念仏も、もう役に立ちそうにはなかった。


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