フィディオは軟派な奴だ。そりゃイタリア人だから、と彼は笑って言うが、それは言い訳の様にも聞こえる。そう言うと彼は整った顔に甘い笑みを浮かべて、首を竦めた。
「まあ、一番はマモルだから」
全く信じられる話ではない。フィディオは他の可愛い女の子がいたらすぐそこに駆けていってナンパをするし、女の子に応援されると直ぐデレデレして派手にパフォーマンスをする。というか別に俺とフィディオは付き合っている訳ではない。もしかしてサッカー仲間としての一番なのか、と思って何となく溜め息をつきたくなった。別にがっかりする理由なんてないのに。
「マモルは可愛いね」
イタリア人の口からは女子を褒める言葉が呼吸をするみたいにすらすら出てくる。それは直球であったり砂糖菓子に蜂蜜をかけた様な言葉であったりするが、とりあえず俺の顔を赤くするだけの威力はある。そういうのに耐性がないので困るのだ。耳元で囁かれた時など、そのまま耳をひきちぎってしまいたい位恥ずかしくなってしまった。
「本当に天使みたい」
フィディオはまだ何かを言っている。しかし俺は、フィディオがこの台詞を他の女の子に言っている所を五回は見た。きっとこれは彼にとって挨拶の様なものなのだ。しかし、何故かむかついたのでフィディオの鼻をぎゅっと摘んでやった。フィディオは面食らった様な顔をした後、不思議そうに首を傾げた。俺だけが緊張してるなんて、馬鹿みたい。


(好きなんて、まだ言えない)

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