時たま起こるくらくらした眩暈は、随分昔から続くものだ。異性と子供を作る為の生理のせいとか、そういう訳ではないし、発作的に起こるという訳でもない。その眩暈では頭の中がくわんくわんと回る。夕方の教室に、一人でいると起こる現象だ。部活の最中忘れ物を取りに行ったりだとか日直で仕事をしている時、くらり、と世界が反転する。
「いいよな夕方って」
その眩暈には、必ず円堂君の幻覚がついて来た。しかしその幻覚は決まって、昔本当にあった円堂君との会話だった。私が返事をしなくても、話はどんどん進んでいく。
「秋もか?うん、部活が終わって、ちょっと涼しくなった風が顔に当たった瞬間が、一番好きなんだ。」
そう言うと円堂君の幻覚は歯を見せて笑った。相変わらずぐるぐると世界は反転しているが、円堂君の幻覚はただしゃんとその場に立っている。
「ああ今俺サッカーして、皆といて、幸せだなあって思うんだ」
円堂君の幻覚がそういって、眩暈は止む。世界は元に戻っていた。静かで薄暗い教室には、かちこち時計の音が広がるだけだ。
「円堂君は、綺麗ね」
彼は真っ白すぎる。きっと円堂君は恋だとかそんなだとか、そんな感情は持ち合わせていないのだ。彼が私に伝えてくれる好意は嘘ではないが、嘘だ。
「私は、」
あの日の綺麗な円堂君に恋をしてから時間が止まってしまったのに。



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