南←円←照

秋という季節に相応しくないかんかん照りの中、南雲はただじっと立っていた。見据える先は俺ではない誰かだ。赤い髪の毛が揺れる度、本当は泣きそうになっていた。汗がぽたぽた地面に垂れていく。休憩を求めるメンバーの声が十を越えた所で、漸く「休憩!」と声を出すと、皆は歓声を上げてドリンクを持った秋の元へ駆けていった。勿論南雲もその中に入っている。南雲はよく笑う様になった。きっと、自分ではない誰かのおかげだ。
「何見てるの?」
いつの間にか横に立っていた照美が言った。少し驚きつつ、小さく笑みを作る。
「なあ、照美」
「なに?」
照美が俺を見る。照美の綺麗なつやつやの目玉には俺が映っていた。
「照美も、よく笑うようになったな」
そう呟くと、照美は困った様に笑って、それから溜め息をついた。
「円堂君は南雲君だけ見てればいいさ」
照美の額を汗が伝っていく。俺の恋は、存外にわかりやすかったらしい。
「…そういうわけにもいかないよ」
照美は、ふうん、と気のない返事をすると、タオルで目の辺りを拭った。照美は優しくて、俺はひどい奴だ。俺はタオルで顔を覆った。

今日は本当に暑いから、照美の目から、俺の目から、しょっぱい汗が出たっておかしくない。



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