※数年後

夜中、自室の窓に石が当たる軽い音がした。今後の試合についてまとめていてうとうとしていた時だったので、目がきっぱりと覚めた。寒い寒いと思いながら窓を開けると、バイクに乗った吹雪がにこにこ笑っていた。連絡も無しに、実に半年ぶりの再会だった。
「ふ、吹雪!?」
「一緒に乗って!」
俺の驚きなど無視して、吹雪はそう言って手を振った。話を聞かないところは相変わらずだ。雪が降っているのも気にしないとは流石北海道人だ、一人そう思いつつ、コートを羽織った。

「お前何やってんだよ!」
「まあ乗ってよ」
また吹雪は俺の発言を無視して、後ろのシートをぽんと叩いた。昔よりも精悍になった顔がふにゃりと緩む。昔から何となく彼には逆らえていない。ぶつぶつ言いつつ後ろのシートへ跨がると、吹雪は嬉しそうに目を細めた。

「やあー、久しぶりだね」
エンジンの音に混じって吹雪の声が聞こえる。冷たい風が頬に当たりぴりぴりと痛い。
「でもいきなりどうしたんだよ」
そう言うと、吹雪はくすくす笑って、首をちょんと傾げた。
「星が綺麗だったからさあ」
ばるばるばる、エンジンの音がうるさい。新しめのバイクに見えるので、少し意外だった。少し顔を上げる。数個の星が黒い空で光っていた。
「会いたくなっちゃった」
吹雪が明るい声で、歌う様に呟いた。
「…馬鹿だろ」
そう言ったものの吹雪は気にする様子もなく、「何か食べに行かない?」と呑気に笑っている。変わらないなあとついた溜め息は白にきらきら輝いて消えた。



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