※昔っぽいパラレル
※何でも許せる方向け

自分の家はそこまで栄えている訳ではなく、かといって苦しい訳でもない、ごく普通の商家だ。祖父の代にはとても大きな店であったが祖父が隠居し、父が「これ以上大きくしても自分の手におえなくなる」と店を縮小してからは細々とやって来た。幸せな日々だった。
同じ街には偉い武家の方がいらっしゃった。名は佐久間といって、息子の一人は俺と同い年らしいということしか知らない。同じ街とはいっても身分の違いは明らかで、関わりなど皆無に等しかった。

ある夜のことだ。使いの帰り、久々に友人の風丸に会い少々長話をしてしまった。心配性の母なので、急いで帰ろうと走っていた。提灯の火がゆらゆらと揺れていた。
「なあ」
不意に後ろから声をかけられた。すこし高い少年の声で、明るいという雰囲気ではなかった。
「え?」
振り向くと、提灯の光で見えたのは長い銀髪を持った少年の姿だった。長い睫毛に覆われた目がぎらぎらと光っている。
「金を、よこせ」
少年は眉を潜めて俺を睨んでいた。静かな夜で、周りがしんと静まっていた。だから少年の小さな、しかし荒い息遣いが聞こえた。ひゅうひゅうと喉を息が通っていく音が風に混じる。
「…も、持ってな、い」
肩がぶるりと震えた。少年は俺の肩をぎゅっと掴むと、頼む、と小さく言った。
「あんな家から、逃げたいんだ」
少年の目は本気で、そこら辺の強盗という感じには見えなかった。
「…ないんだ」
それは本当だった。使いというのも荷物を渡すだけで金を持ち歩いてはいない。少年は肩をがっくりと落とした。可哀相な位顔が青くなっている。
「…俺の家来る?」
ぽっと唇を転がったのはそんな言葉だった。一瞬自分でも何を言ったのか分からなかったし、少年も驚いた顔をしていた。
「いい、のか」
少年はそう言った後、やはり自分が何を言ったか分からないという顔をしていた。
「…君、名前は?」
今だ混乱する頭でそんなことを尋ねると、少年は「次郎だ」と呟いた。

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続き書きたいです


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