「神はねえ全能なんだよ」
そうすっぱり言い切る照美は確かに成績も良くサッカーも上手くて、何でもこなしてしまう様な奴だ。彼はその言葉を自慢げに言った訳でもなく、当然のことを言ったという風だった。
「ふうん」
何と返事すればいいのか分からずに、適当にそう答えると、照美はにっこりと微笑んだ。美術の教科書にある絵画で見た天使の様な笑顔だ、と自分で思って凄く恥ずかしくなった。
「円堂君は何か願い事はないかい」
「願い事?」
照美が俺に顔を近づけて言った。綺麗な金の髪が照美の動きに合わせて揺れる。
「そう。神は全能だから、例え叶えてあげられなくてもアドバイスぐらいは出来るよ。何かしてあげたりとかも。」
例えば好きな子の事とか。照美がそう呟いてちらりと俺を見た。
「そんなこといきなり言われても…」
うんうんと小さな頭を捻ったって思い付くことはサッカーのこと位しかない。好きな子関係…いや、そういえば一つだけあったなあ。
「好きな子のことでいいのか?」
「う、うん。」
照美は少し焦ったようにそう返事をした。心臓の辺りで手をぎゅっと握っている。自分から聞いたのに、変な奴。
「好きな奴に、これ渡して欲しいんだ」
ポケットから包みを出す。この前偶然見つけて、彼に似合うと思い、ついつい買ってしまったものだ。
「これ何?」
「十字架のキーホルダー」
これが似合う奴だから、そう呟くと照美は少し顔を伏せて「そっか」と呟いた。
「誰に渡せばいいの?」
照美が顔を上げる。目元が少しだけ赤くなっていた。今度は俺が心臓の辺りで手をぎゅっと握る。心臓がどくどくいって煩い位だ。からからの口を開いて声を出した。
「照美に、渡してくれ」




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