「大人は楽しくないんだよ」
フードを外したケニーの声は酷く明瞭で耳障りがいい。いつも外していればいいのにと言ったことがあったが、彼は黙って首を振っただけだった。
「なんでそう思うの」
小さく呟いてみると、ケニーは金色の髪をさらさら揺らして、少し考える風な様子を見せた。
「大人になったら、セックスをするじゃない」
「するだろうね」
「きっと凄く気持ちいいことだよ」
「じゃあいいじゃないか」
ケニーはこちらを見ると首をゆっくり振って情けない笑顔を浮かべた。
「でもそんなことをしちゃったら、もうセックス依存症になっちゃうじゃない。他のことが見えないなくなるなんて、そんなの嫌だよ。」
きっと世界にはセックスよりキラキラした綺麗で気持ちいいものが他にもあるんだ、ケニーはそこまで言うと、はっと思い出した様に目をぐるりと回した。
「でもスタンとなら別にいいかな」
矛盾してるぞ、そう言えなかったのはきっと僕もそう思ったからだ。
(恋を詰めた宝石箱を開けた)
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初ケニスタ。