ちゃぷりと湯が揺れる。腹から広がっていく温かさに思わず「あー」と声を出すと、シャワーを浴びている南雲がふっと笑った。
「おっさんくせえ」
うるさいと舌を出すと、舌を指で軽く引っ張られた。情けない声が口から漏れると、南雲は肩をすくめて笑った。腹が立って南雲に背を向ける。南雲は声を上げて笑いながら、シャワーをこちらに向けた。頭に冷たい水がかかり、キンと冷えてくる。振り向いて南雲に噛み付くように怒った。
「何すんだ!」
「眠そうだから」
今からの練習寝たら駄目だろと飄々とした顔の南雲はまた笑い、ボディーソープのノズルを二三度押した。ふわりと広がるオレンジの匂いと朝の光の入る浴室は何となく清々しい。この匂いは南雲の匂いと同じで、そう考えるともう気分が良くなった。そして自分は単純だと思い小さく苦笑した。
「もう痛くないか?」
南雲がこちらを見て言う。その言葉は昨晩、いやもう今日に入るかもしれない時間帯にした行為に対してのものだ。暫くご無沙汰だったからか自分も南雲もいつもより粘っこいキスをする回数が多くて、それが原因でお互い歯止めがきかずに、結局朝までずっと抱き合ってセックスをした。正直疲れたし身体が痛い。しかしここでそう言うと練習をさせてもらえないかもしれないという可能性があるので、黙って首を振った。
「嘘つき」
そう言って南雲が俺の腕を引っ張り、唇と唇をくっつけた。唇を舌で舐められ、特に抵抗もなく口を開ける。舌は俺の舌をあっという間に捕らえてくるくると舐め始めた。それは昨晩のキスによく似ていて、そのことを思いだし少し顔が赤くなる。南雲の舌は俺の歯を丁寧に一つずつなぞると、最後に俺の舌を一度吸って口を離した。絡まった唾液は南雲が離れるにつれ伸びていき、最後には湯舟に落ちた。南雲が俺の耳に顔を寄せる。
「痛いなら無理すんなよ」
オレンジの香りが鼻孔をくすぐって、そう言う南雲が急に愛しくなった。風呂から身を乗り出し南雲を抱きしめる。ボディーソープが自分につくのも特には気にならなかった。
「俺って今南雲と同じ匂いなんだな」
何だそりゃ、と南雲が呟く。しかしその顔が真っ赤なのを知っている俺は、あははと声を上げて笑った。


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彩香様
→この度はリクエストありがとうございました!裏要素がほぼなくてすみませ…orz甘さが少しでも感じて頂けたら幸いです!




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