これの続き

「やあ」
彼がおひさま園に訪れたのは、あの河川敷で出会ってから一週間後の日曜日のことだった。彼は色気も何もない青色のジャージを着てにこにこ笑っていただけなのに、心臓の辺りが一気に熱く絞められた感じがした。
「あら円堂君。どうしたの?」
瞳子姉さんが驚いた様な声を出してこちらに近付いてきた。円堂守が微笑んで、俺の背中を軽く叩く。彼を見上げると、彼は片手に持ったサッカーボールを俺に近付けた。
「こんにちは。今日は夏彦とサッカーしに来たんですよ」
そう円堂守が言った途端、瞳子姉さんが眉を吊り上げてこちらを見た。
「夏彦、また夜に外に出たのね。」
俺が姉さんから目を反らすと同時に、円堂守は「やばっ」と小さく呟いて俺を見た。
「ごめん夏彦。内緒だったんだな」
彼の自分より大きな荒れた手が頭の上にのせられて、じんわり熱が広がるのが分かった。他の、園にいる以外の大人にされたら払いのけてしまうのに、なぜだか手を除けることは出来なかった。
「あれっ円堂君!」
明るい声と何人かの足音にドキリと心臓が跳ねた。声のした方向を見ると、ヒロトが嬉しげに体をぴょこぴょこ揺らしている。近くにいる晴矢や風介も笑顔だ。
「お、元気だったか?」
その言葉で、彼と知り合いだったのは自分以外にもいたのだと理解した。お腹の奥の方がじんわり痛くなって、何だか鼻がつんとする。その理由は自分でも分からなかった。
「円堂サッカーするのか?俺達もしたい!」
晴矢がうきうきと言う。円堂守がうんうんと大きく頷くと、三人は手を大きく挙げてわーい、と歓声を上げた。
「あ、」
小さな声が口から漏れたがすぐに歓声に消された。腹に感じる鈍い痛みがさらに増してきて、目尻にほんの少し水分が溜まった。悲観することは何もない筈なのに。皆とサッカーするのは楽しいし、皆のことは好きなのに、何故か凄く悲しくなってくる。慌てて目を擦ると、円堂守がこちらを見てにっこり笑った。
「夏彦」
彼は自分の前に来るとしゃがんで俺を撫でた。それから自身のバンダナを外し、俺のバンダナと付け替え始めた。
「明日の夜に、皆に内緒で河川敷でサッカーしないか?」
あやす様な口調に腹が立つと同時に、ぼろりと涙が出た。彼にとって自分はまだ子供なのだと思ったからだ。
「…わかった」
小さく呟くと円堂守はホッとした様子で立ち上がった。また出てきそうな涙を抑える為に目をつむる。彼と自分の距離が埋まるまで後何年、どのくらいかかるのかと今すぐ誰かに問いたくなった。


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匿名様
→この度はリクエストありがとうございました!ネパ円が好きなのでとても嬉しかったです^∀^ごちゃごちゃですみません><



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