※ちょっと危険


吹雪のセックスはいつも暴力的だ。暴力、といっても本当にふるわれるわけではないが。まず彼は何も喋らない。日中ぺらぺらとよく動く口は固く閉じられていて、軽く噛み締めている唇は赤くなっていた。それから俺を見る目はいつも鋭くて、どんな時でも俺から目を離そうとはしない。俺が痛いだとか言ったところで吹雪は何も言わないし、まにうっすら笑みを浮かべるだけだった。それに、吹雪との行為はだいたいが突然であった。夜中いきなり部屋にやって来て「しよう」と言ってきたことも何度もある。疲れている、嫌だ、そう言っても吹雪は止めてくれたことはない。だから結局はなすがままに、吹雪が果てていくのをぼんやりと見るセックスをしていた。彼は本当にセックスだけをしてキスやら何やらはしてくれない。ただ吹雪はたまに俺を噛み、俺が痛がると満足したように行為を続けた。そんな表情を変えないままの吹雪とのセックスは、俺にとって少し苦痛であった。
「じゃあ、おやすみ」
終わった後のいつも彼がいう言葉はこれだ。普段の穏やかな笑顔で、こってこての生クリームに砂糖をぶっかけた様な甘い声で言う。馬鹿なことに俺はその笑顔と声が好きで、だから嫌なセックスも受け入れてしまう。おやすみと言う彼が去った後の布団は少し吹雪の温かさが残っていて、その布団に包まって寝るのも不思議と幸せな時だった。そして俺は、あんなに嫌うセックスを、彼の笑顔を見るために、ほんの少し期待してしまう。次のセックスはもっと優しい、キスの一つでもあるような、そんな夢を考えながら眠りにつく。そしてまたその夢を粉々に壊されて、温かさに包まって、また夢を見ることを続ける。自分でもそのことを無駄だと思っていたが止めることは出来なかった。それはきっと普段の吹雪が頭にあったからだろう。あの優しい吹雪がこんなことをする筈がない、と頭の何処かで考えていたのだ。そうやって矛盾をぐるぐる頭に放り投げながら俺はサッカーの練習をして、吹雪もにこにこ笑いながらボールを蹴っていた。

「お疲れ」
タオルで顔を拭いながら吹雪が言う。この手洗い場には今俺と吹雪しかおらず、なんだかしんとしていた。
「ああ、うん。」
今日も凄かったななんて言いつつ吹雪を見ると、吹雪はぼうっとどこかを見ていた。
「そんなこと言って、キャプテンはこっちを二回しか見なかったじゃない」
やはりどこかを見つめながら吹雪が呟く。それから、吹雪が顔をこちらに動かした。
「他の人は何回も何回も見てた癖に」
吹雪が溜め息を吐いて、セックスをしている時の目で俺を見た。何とも冷たい目だった。
「腹立つ」
そう吹雪の口から出た声はいつもより低く、その後軽く噛み締めた唇の赤を見て、吹雪はセックスをしている時いつもこんなことを考えているのかと心の底で思って泣きそうになった。


--------------
苑樹様
→この度はリクエストありがとうございます!意味がわからない上にセックスセックス五月蝿くてすみません!本当にありがとうございました!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -