「リップクリーム持ってない?」
基山君がそう言いながら僕の部屋へ山賊よろしくずかずかと入り込んで来たのは、午前5時のことだった。当然僕は就寝中で、そこをたたき起こされたのだ。
「わあ、基山君起きるの早いね〜」
そう厭味たっぷりに言ってやると、基山君は「おひさま園は5時起床だったから癖になっちゃった」と無表情で至極丁寧に答えた。こういう厭味が通じない人っているよね。
「で、何?リップクリーム?」
一刻も早く用件を終わらせて寝たいので、基山君にそう言うと基山君はうんと大きく頷いた。
「リップクリームきれちゃってさ、皆持ってないっていうし。」
もしかして、この朝5時から色んな人の所を回ったのだろうか。僕こんな迷惑な人間初めて見たよ。
「あるけど…基山君そんなに繊細には見えないなあ」
あはは、と乾いた笑い付きで第二弾の厭味を言うが、基山君はそれさえもスルーして不健康に青白い顔をいつもより赤くした。
「だって…いつ円堂君とキスするか分からないじゃないか。」
もじもじと恋する乙女の様に恥じらう基山君に、思わず「は?」と本音をそのまま吐いてしまった。おおっと士郎ったら失敗失敗☆
「ほら考えてみてよ!例えば廊下の曲がり角でぶつかって事故チューとか、『実は俺ずっとヒロトのことが…』って円堂君に告白されてそのままキスとか、何かの罰ゲームでポッキーゲームしてそのまま…とか日常にロマンスが溢れてるのに!いざという時唇ガサガサなんて恥ずかしいじゃないか!」
ごめん「ほら考えてみてよ」までしかまともに聞いてなかった。もう早く帰って欲しい。
「そんなチャンスないだろうけどね。」
そう言いつつもリップを渡す僕はとても優しい。この優しさにキャプテンはもうそろそろ惚れてくれる頃じゃないんだらうか。
「吹雪君と間接キス…か」
基山君が溜め息をつきながらリップクリームを塗る。もう怒りを通り越して笑えてきたあはは。嫌なら使うなよ。ていうか基山君と間接キスだなんて僕だって本当は悍ましい位嫌だけど睡眠の為に譲歩してあげてるんだよ。分かれよ。もう眠いよ。
「ありがとう」
そう言いながら基山君がリップクリームを返してくる。もうあげるよこれ。
こんこん
後数秒で眠るかという瞬間、ドアがノックされてそれから控えめに開き始めた。ゆっくり視線を向けると、キャプテンが立っていた。目が一瞬にして覚める。基山君は興奮していて最早日本語を話していない。
「まっまもいや円堂くnpjmt@うあ:いやはぅううおはよおお」
「おはようヒロト!悪いな吹雪こんな朝早くに」
キャプテンが申し訳なさそうに笑う。キャプテンなら全然、むしろ大歓迎だ。
「全然いいよ、どうしたの?」
「いやヒロトがリップクリーム探してるって聞いたんだけどいなくて…吹雪の部屋にいるって聞いたから。」
へえ、と返事をした瞬間にキャプテンの手にあるリップクリームが目に入った。
「キャプテンそれ…」
「え?ああ、俺唇乾燥しやすいからって母ちゃんに持たされてんだけど使うかなって、…ああ!吹雪の借りたのか!」
よかったと笑う円堂君の隣で基山君が絶望の表情を浮かべる。『まもたんと間接キスするチャンスが…』という顔だ。
「ふんっ!」 べきっ
全身の力を使ってリップクリームを折る。それからキャプテンに向かって笑いかけた。
「ちょっと不慮の事故でリップが折れちゃったから、キャプテンの貸してもらっていい?」

その後の基山君の顔を僕はきっと一生忘れないだろう。



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ゆっきー様
→駄文の上に意味が分からない感じになってしまってすみません^▽^少しでも楽しんで頂ければ幸いです。リクエストありがとうございました!




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