幸福の足音



※何故か同中

ごほごほと咳が口から零れていく。ツイていないとは正にこういう状態のことをいうのだ。寝癖の取れない髪の毛、頬っぺたに出来た畳の跡、寝違えた首、風に飛ばされて汚れたマフラー、砂埃という名のファブリーズを全身に散らされた制服、転んで擦りむいた膝、新しい靴のせいか靴擦れしたかかと、極めつけはこの辛い風邪。今日部活がなければ休んでいるくらいだ。
「だっせーマスク」
隣を颯爽と自転車で通っていく南雲が言う。普通に挨拶出来ないのか、と言おうとしたが、喉が痛くて声が出ない。仕方ないので返事せずにいると、5メートルほど前で南雲が止まってこちらに何かを投げた。反射的に取ると、のど飴だった。
「やる」
たったそれだけ言うと、南雲はまた自転車を漕いで去っていった。



2011/02/11 04:48






「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -