メリーミー! ※数年後 小さな頃、白いドレスに憧れたものだった。母さんと父さんの結婚式の写真を見てはわくわくして、自分の旦那さんになるのはどんな人だろうと胸をときめかせたものだ。それが幼い頃の唯一女の子らしい趣味だった。 「まあ悪くないぜ」 少しラメの入った黒いタキシードを着て南雲が笑う。彼の細身の体にはよく似合っていた。 「南雲、いや、晴矢も格好いいよ。」 俺も南雲だしな、そう言って笑うと、晴矢も小さく笑った。 「じゃあそろそろだぞ」 壁掛けの時計を見た晴矢が呟く。今更緊張することなんかないのに、胸が跳ねた。 「結構人呼んだからな、賑やかな式になるぜ。」 「おひさま園はご丁寧なことに全員参加だしな。」 ふっ、と馬鹿にしたように、けれども嬉しそうに晴矢が言った。 「俺ら、結婚するんだな。」 「ああ。」 歩みを止めて晴矢の目を見つめる。まだ式も始まっていないのに、何だか泣き出しそうになってしまった。 「晴矢、俺、ドレス似合う?」 囁くような小さな声で言うと、晴矢は一瞬目を大きくして、それから頬を染めて、本当に嬉しそうに笑った。 「悪くないんじゃねーの。」 昔の俺に教えてやりたい。お前の旦那になる人は、ぶっきらぼうで、意地悪で、あまのじゃくで、それでも世界で一番俺を幸せにしてくれる人だと。 2011/02/11 23:30 |