こちらが愛になります



湯舟に浸かってふうと息を吐く。今日は練習量が多少増えたためか少し体が疲れていたが、嫌ではない。いつの間に自分はこんな風にサッカーをする様になったのだろう。とぷん、と顔を湯につける。視界はゆらゆら揺れていた。
「南雲」
ふと円堂の声が聞こえた。目の前の景色がくるくると変わっていく。瞬きをしてもそれは変わらなかった。湯の中にいるのに、息が全く苦しくない。口から泡がぷくぷくと出ていくだけだ。目の前の風景がグラウンドになり、目の前にはサッカーボールを持った円堂がいた。
「なあ南雲、目閉じてくれ。」
目の前の円堂はゆらゆら揺れている。目をつむった瞬間彼がいなくなりそうで、それが嫌で首を振った。
「お願いだよ、頼むよ。」
また首を振る。円堂は眉間にシワを寄せて、唇をギュッと噛んだ。
「…じゃあさ、俺といてくれ」
そう縋るように円堂が言った。頷いて彼の手をとる。が、そこでいきなり息が苦しくなった。目の前の円堂は先程よりゆらゆら揺れている。後ろにはきらきら星が光っていて、これ以上ないくらい綺麗だ。それでも息が続かなくなって、湯舟から飛び出した。
「ぷはっ、あ」
はあはあと呼吸しながら息をととのえる。目の前の景色は、ひどく汚かった。



2011/02/11 20:00






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