そんなのいらない




円堂は海外留学に行った。戻ってくる時期だとかそんなことは言わず、ただ留学するとだけ言っていた。ああ、もう俺と会うことはないのだろうな。その時直感的にそう思った。

「じゃあ、元気でな」
「なんだよ。そんな一生の別れみたいに。」
赤くなった目元のまま円堂が笑う。こういう時まで笑う彼が何だか憎らしい。
「だってお前、もう日本帰る気ないんだろ。」
そう言ってやると、円堂は少し驚いたように目をぱちぱちした。
「お前、祖父さんと同じことがしてーんじゃねーの。」
円堂の顔が徐々に歪んでいく。円堂の夢を俺が止める権利はないから、ただ傍観するだけだ。円堂の目から涙がぽとりと落ちた。
「オレのこと、忘れないでくれるか」
弱々しい声だ。いっつも皆に指示するような、大きな声で言えばいいものを。
「ああ」
忘れれるかよ、ばーか。



2011/02/11 08:45






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