金乱



※高学年


「金吾は武士の子だもの」
自分と彼を断絶するには、そう一言言ってしまえばいいだけだった。彼はいつまで経っても、ひたむきで、一生懸命で、底無しの努力家だった。だからこそ彼は周りを裏切れないし、自分を捨てられない。これまで歩んできた人生の尊さと清らかさに誇りを持っているから、また彼は進むしかないのだ。
「乱太郎」
昔のように縋り付きさえしなかったけれど、彼の目はどこか悲しげで、心もとない様に見えた。
「駄目だよ金吾」
彼が笑う時にできる笑窪が好きだった。呼ばれて振り向いた時のあどけない顔が好きだった。私を見る目の柔らかい光が好きだった。
「これからはもう好きって言えない。」
金吾は卒業したら、きっと婚姻するのだろう。彼が愛を囁き、囁かれるその時、私はどうしているのだろうか。
「けど金吾、忘れないで、私を」


せめて、愛が何か形に残せたらよかったのに。


2011/12/13 00:25






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