兵長のキスはいつも噛むようで、そして短く浅い。（それなのに潔癖が発動し歯磨きをすることもあるから少し腹が立つというものだ）
暴力的と言えばいいのだろうか。いつも突然に俺の頭を抑えつけてはキスし、そして下唇を尖った歯でちくりと噛む。なので、時たま血が出ることもある。そして兵長はそれを見て、ほんの少しだけ口角を上げるのだ。
最初は何なのだろう、と考えていたが、最近「唇に傷があって痛いとむやみに自傷行為をしなくなるからではないだろうか」という結論に至った。

「グズが」

そのことを兵長に言えば、そう一言返された。彼は書類を机に置くと、こちらに近付き、そして俺を蹴り倒した。
「なっ」
にするんですか、と言う前に、兵長は俺に跨がると、いつものようにキスをして、それからいつもより痛く唇を噛んだ。血が唇を流れていくのが分かる。兵長は血を指でなぞると、白いハンカチでそれを拭った。
「ただの所有印だ」

え、と言う驚きの声を上げれば、うるせえ、と兵長に再び蹴られた。床に倒れながら、きっと今のは彼の照れ隠しなのだろう、と思い、自分をそっと慰めた。