涼→円



※10年後
※なんか暗い




こいつは、もう無理だ。これ以上安らかに生きていけるわけがない。殺してしまわなければならない。
彼に会った瞬間にそう思った。久しぶりに会った彼は、昔と変わらず、明るく快活であった。だが、笑顔が張り付いたままだったのだ。昔の彼は違った。こんな、作った笑いをするような奴ではなかった。もっと心の底から嬉しそうに、幸せを噛み締めた笑顔をしていた。
「涼野、元気だったか?」
彼は自分が変わったことに気が付いていないのだろう。無自覚のまま過ごして、自分は10年前と同じだと思っている。それがたまらなく哀れに思えた。
「うん。…君は?」
そう聞くと、彼は笑顔のまま「元気だよ」と言った。そんなの嘘だと言いかけた唇をぎゅっと結ぶ。
「…サッカー部の監督をしているんだろう?」
「うん。なんか昔に戻ったみたいで楽しいよ。」
色々事情があるけどね。その独り言のような小さな声が、いやに耳に響いた。
「…本当に、楽しい?」
彼に一歩近寄り、そう言った。彼は一瞬目を見開くと、少し体を後ろに引いた。
「楽しいよ。」
苛立っているような声だった。昔の彼はこんな感情を持ってなどいなかった。ただ前に突き進んで、時に泣きながらも最後は笑っていた、彼が。
「円堂」
会わない間に彼に何があったのかは知らない。けれど、昔の彼は死んでいた。とてもじゃないが見ていられない。口からころりと言葉が落ちた。
「君はもう、これから幸せになんてなれないよ。」
駄目だ、彼が溶けてしまう前に、私が、助けてやらなければならないのだ。
「絶対に」
確かな使命感が、黒い腹の底に産まれた。


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私と一緒じゃなかった円堂が幸せだったわけないだろ?ハア?っていう妄想系ゆるふわヤンデレボーイ涼野と普通に人生楽しい円堂さんを目指しましたが駄目でした


2012/07/16 18:51






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