伝♀乱 ※5年後 目の前で、赤髪を揺らしながらぐずる奴を、無性に蹴っ飛ばしたくなった。(身軽なこいつは避けてしまうだろうが) 「伝七」 乱太郎が嗚咽をあげながら、僕の名前を呼んだ。やめろ、僕の両親はそんな風に鼻をすすりながら呼ばれるためにこの名前をつけてくれた訳じゃない、そんな声で呼ぶな。 「どうして」 彼女は目元をぬぐってこちらを見据えた。目が充血して、一層不細工だ。化粧でもしなけりゃ見てられない。いいや、髪を結って、絢爛な着物…よりも、こいつにぴったりな地味な白い着物でも着てもらわなければ、見るに堪えない。 「本当に」 乱太郎が目を伏せる。意外と長い睫毛に気がついたのは、いつのことだったろう。 「私でいいの?」 お前がいい、なんて言えっこない。彼女から目を逸らして、大きく頷くだけにしておいた。 ------------- プロポーズ 2011/12/05 22:15 |