土井←乱



※5年後

チョークが黒板に当たり、カツコツと跳ねる音が教室に響く。横ではきり丸が押し花作成に精を出し、しんベエがふわあと欠伸をしていた。
「あのなあお前達、全員進路が決まったからって、そうのんびりするなよ。」
叱咤の声には、それでも柔らかな響きがこもっている。はい、と皆返事だけいいのは六年間ずっとだ。先生は苦笑して、また黒板に向かう。
一年生の頃は、ぎゅっと手を繋いでいた。二年生の頃は、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。三年生の頃は、優しく肩を抱かれた。四年生の頃は、こんと頭を小突かれた。五年生の頃は、にっこり笑って背中を押された。今では。
年々少なくなる触れ合いが寂しくて仕方ない。昔の様にありたいと思う。けれど、昔と同じ気持ちで彼と接することなど出来ないと分かっていた。
カツコツという音が耳に入る。ふと先生がこちらを見て、柔らかく笑った。
私、もう少しで先生の生徒ですらなくなっちゃうんですね。
彼にそう言葉をぶつけられたらどんなにいいかと思いながら、微笑み返した。


------------------
土井乱イメージソングは 地獄先生です


2012/01/08 22:37






「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -