風♀円



※パラレル
※遠くに嫁にいく円堂さんと幼なじみ風丸


色素の薄い髪が菊模様の着物に流れる様子は、言葉を口に出来ない程美しかった。いつもの笑顔を浮かべた彼女は、しかし無機質な人形のように見える。少し開いた障子から降り注ぐ月光が、彼女の肌を白く照らしていた。
「お前は本当に」
馬鹿だよ。そう言いたかったのだけれども、喉に言葉が引っ掛かった。茶色の睫毛の下でせわしなく動く目が、俺をぴたりと捉える。
「そんなの、ずっと知ってるだろう、お前は。」
諭すような口調は、もう小さな頃の彼女ではない。下駄を鳴らし走り回る彼女の笑顔は、とっくの昔に消滅していた。
「お前が俺のところに逃げてきたって、俺はどこにも連れていけない、連れていけないよ。」
情けない話だと自分でも思った。けれども、苦労を重ねてきた彼女が楽になるためには、自分の元にいては駄目なのだ。きっとまた大変な思いをさせる。
「風丸」
諦めたように彼女が呟いた。細い手が、俺の首を撫で、頬に触れる。
「お前の子供、欲しかったな。」
冷たい粒が、畳に落ちて染みた。



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あけましておめでたいので姫はじめを書こうとしたら間違えました



2012/01/04 13:53






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