臨帝



「臨也の秘密教えてあげようか。」
セルティーさんのご厚意で夕飯をご馳走になった後、新羅さんがそう笑った。隣のセルティーさんの影が興味を引かれたように揺らめく。新羅さんはそれを満足そうに見ると、珈琲を一口啜った。

「ピュアなんだよ。純粋純水100%、純情とかいて臨也と読むレベル。」
「…新羅さんは、意外と嘘が下手なんですね。」
『…ガッカリしたぞ』
セルティーさんの影の動きが止まる。僕ら二人を見ながら、新羅さんはぱたぱた手を振った。
「本当なんだって、アイツ仕事関係以外では愛の営みはおろかキスさえしたことないんだから!そうだな…感じ的には素人童貞みたいなものだよ!」
「その例えはどうかと…」
身振り手振りを加えて熱弁する新羅さんを見て、小さく苦笑が漏れる。本当なんだろうけどどうにも嘘っぽい。
「…本題に入るんだけど」
ごほんと咳ばらいをして、新羅さんが僕の目をじっと見た。
「臨也ってさ、帝人君と話す時どんな感じ?」
唐突な質問に驚いたものの、頭に彼を思い浮かべる。セルティーさんはPDAに『まさか…!』と意味深なメッセージを書いていた。
「えっと…だいたい目は合わせてくれません。早口で、ごくたまに吃ります。何だか顔が赤い気もします。すぐ立ち去っちゃうけど、よくお会いしますよ。」
そこまで言うと、新羅さんは「ビンゴ」とにやにや笑って、僕の肩に手を置いた。
「アイツは人と目を合わせて話すことが弁論の上で有効だって知ってるし、吃るはずがない。顔もどちらかと言えば青い方だし、けっこう多忙みたいだから頻繁に会えることもない。つまり…」
肩に置かれた手の力が強くなる。新羅さんの笑みが一層濃くなる。

「臨也の知人としてお願いするけど、彼の君への恋心を利用して、臨也をまともな人間にしてやって。」

どうしてこうなった。



2011/03/04 21:36






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