藤←アシ



いつだって言葉を飲み込んできた僕の喉は、きっともうそろそろ容量オーバーだ。ごくんと唾と共に流したって、血管だとかを通って全身にくまなく溜まっていく。言葉は口にしてしまえば形になる、そんな話は嘘だ。だって今僕は猛烈に苦しい。これ以上飲み込んだら、全部うえっと吐いちゃいそう。それを考えると何だか食欲もわかなくて、最近のお昼ご飯はダイエット中の女の子も真っ青なカロリーメイト一本とお茶という二品ばかりだ。みんな優しいから心配しておかずを分けようとしてくれるけども、いつも断る。そろそろ本当にパンクしそうで大変だから。

「もう嫌だ。」
家族みんな寝てしまった夜中、ベッドに寝転がりながらぽつりと言ってみた。当然返事もなく(あったら怖い)期待もしていないのに溜め息をつく。彼に言いたくてしょうがない言葉を喉から引きずりだしたけれど、苦しさに大きな変化はない。
「嫌だよ藤君。」
友達として生きるのも、いつか彼の背中を送るのも、お嫁さんの横で照れ笑いをする彼を見るのも。
かちかち秒針の音がうるさい。こってりした濃紺の窓の外を見て、布団を頭から被る。このまま目が覚めないでくれと願ったけれど、その願望を一人鼻で笑った。


2011/04/01 00:21


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