藤アシ※ぬるいエロ



※自慰


口から息が小さく漏れる。摩る度に震えるそれは、グロテスクな色を更に濃くしていた。
「…っ」
皆が寝静まった暗闇の中で声を押し殺す。壁一枚隔てた向こうには誰か従業員が寝ているから、滅多なことはできない。シンとした空間にちかちかと橙色の豆電球が光って、それが背徳感を増した。
「ふっ…」
玉になった汗が髪の毛を伝って落ち、布団に染み込んでいく。寒いから布団に包まっていたというのに、今では熱くて仕方がない。
「…はっ…あ」
頭に浮かぶのは丸い目の友人だ。彼の柔らかな黒髪に包まれた後頭部の形や日焼けをしていない白くて細い首、丸く引き締まった顎のライン、ピンク色の薄い唇、それから色々な表情が浮かんでは消えて浮かんでは消えてのフラッシュバックを繰り返す。困ったような笑顔をする彼は、眉をきゅっと潜めて、思いの外長い睫毛を揺らして笑う。怒った顔をする彼は、少し鼻の穴を膨らませて、頬を赤くしている。悲しい顔をする彼は、口をぎゅっと結んで目を閉じる。
「…アシタバ…っ」
朝になればまた自分は彼の隣に座って、何事もなかったかのように彼と話すのだ。彼は何も知らない、こんなことをしている俺を知らない。
「つあ…っ」
透明な白い液がどろりと飛び出し、それから手の上にぽたぽた落ちた。頭が真っ白になって、瞼の裏にちかちかと火花が見える。情けなくて、小さくため息をつく。頭の中のアシタバが俺に向ける笑顔は、実際のアシタバと変わらない、友情を感じた笑みだ。

なんだか泣きそうだ、そう思った。



2011/03/19 11:32






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