〜青春徒然番外篇〜 | ナノ
オマエに負けるのは気に喰わない
『わーいまたまた僕の勝利!ってことでコーラ頼むよ国光』
「…………………」
『あー…国光部長。不服だとは思うけど諦めたほうがいいよ、なぜかコイツ異常にジャンケン強いから』
そう、今僕は国光とジャンケンの勝負をして、勝利を収めたところだ。
(内容はどっちが自動販売機まで行って飲み物を買ってくるか〜っていう単純なものだけどね!)
「ジャンケンとはいえコイツに負けるのは気に喰わない」
『どういう意味だよっ!負けたんだから早く買ってこい!あ、それから国光はコーラなんて飲むんじゃないぞ、スポーツ選手の身体に炭酸は良くないからな』
「こうして微妙に小言を挟んでくるところもムカつく」
『ふっ、負け惜しみか手塚』
「全く似てない柳の物真似を挟んでくるところもムカつく」
『舶カ句ばっかりだな!』
思わず僕が突っ込みにまわるほどだよ!
「まあでも美香に負けるのが悔しいってのはわかるよね」
『相変わらずさり気に毒舌だね周助くん』
僕に負けたら悔しいってなに?
逆に他に僕が勝てるもの中々無いんだからじゃんけんぐらい勝たせてくれたっていいじゃないか!
「まあ手塚もじゃんけんに勝利したのは美香だし、今回は買いに行くしかないんじゃないかなあ」
「無論大石に言われなくても買いには行くつもりだ。ただなんとなく納得いかなくてな」
『ぶつぶつ言うな!国光らしくないぞ!』
「さっきからおまえの小言に心底腹が立つ」
『狽ミどっ!』
なんだか不機嫌な国光に毒を吐かれながらも、昼休みが終わってしまったら元も子もないので自動販売機へと向かった国光。
『にしても美香って本当じゃんけん強いよね』
『でも負けたこともあるよー?』
『そりゃ今まで生きてて一敗もしてない人のほうが珍しいでしょ』
葉樹の冷静な突っ込みにそれもそうかって納得。
「でもたかがじゃんけんとはいえ、手塚が負けるのを見るのはなんか新鮮だなあ」
「俺も俺も!なんだかびっくりしたにゃ」
「フフ、ここで葉樹の言葉を借りるなら手塚だって『負けたことがないほうが珍しい』んだけどね」
うん、確かに国光が負けるのは新鮮だけどさ。
なんかここまで言われると国光が負けるのが都市伝説のように思えてきた。
「ほら、買って来たぞ美香。ちなみに110円だ」
『おう、帰ってきたか都市伝説男』
「はあ?」
『く、国光部長が美香の所為でグレた!美香のバカ!』
え、僕のせいなの!?
「…美香」
『ん?』
「じゃんけんぽんっ」
「「「『(て、手塚国光のあんなノリノリなじゃんけんの掛け声を聞く日が来ようとは!)』」」」
美香→チョキ
手塚→パー
『ふっふーん、不意打ちだったらグーを出すと思ったのかい?残念ながらじゃんけんの覇者の僕にはそんな手は通じないのだよ』
「じゃんけんの覇者ってなに?」
『気にしたら負けだよ英二』
「手塚も中々悔しそうだなあ…」
『そこが可愛いんじゃない大石。ビデオで録画したい!』
「じゃあさっきの手塚も録画したかったんじゃない?葉樹のことだから」
『さっすが周助、よくわかってるねえ』
うん、なんかあそこでコソコソやってるけどまあ気にしない。
『ほら国光、早く飲まないと昼休み終わるよ』
「…それもそうだな」
喉が渇いて飲み物を買いに行ったのに、時間がなくて飲めなかったら意味がない。
それからは普通に飲み物を飲んで、談笑しながら昼休みを過ごした、そんなやりとりがあった日の数日後。
「美香」
『なに、国光。早く行かないと部活遅れるよ?』
「もう一度じゃんけんで勝負しないか」
『?別にいいけど』
「そうか。では俺はグーを出す」
ん?なんで自分の出すのを報告してるんだろ。
でもまあ、僕がパーをだせば勝てるんだよね。
『じゃんけんぽんっ』
美香→パー
手塚→チョキ
「なるほど…流石乾、本当に勝つことが出来た」←嬉しそう
『…………………』
「どうした、美香。部活に遅れるぞ」
『く、国光の嘘つき――――っ!』
「美香!?」
〜回想〜
「美香にじゃんけんで勝つ方法?」
「ああ。実は負けたのは一回や二回ではなくてな」
「(気にしてたのか手塚…)じゃんけんの必勝法なんて呼ばれているものはいくつかあるけれど、どれもあてにはならないよ」
「やはりそうか…」
「ああでも、対美香用なら勝率99.9%の作戦がある」
「なんだ、それは」
「簡単だよ。ただ手塚が自分が出す手を教えればいい。そしたら美香は手塚に勝つ手を出すだろうから、手塚はそれに勝つ手を出せばいいんだ。例えば手塚がパーを出すといえば、美香は素直だからチョキをだすだろうからね」
「なるほど、やってみる」
「ただ、勝てるだろうけど美香は怒るだろうね」
「?」
『国光の馬鹿ぁ…嘘つくことないじゃあないか!』
いやね、僕だってこんなことで叫んで大人気なかったと今は反省しているよ?
それに国光が「乾が〜」とか言ってた気がするから入れ知恵したのも乾だろうし。
だけど僕は国光を嘘を吐くような子に育てた覚えはないぞ!!
それに一度逃げてきてしまった手前、何食わぬ顔で部活に戻るのはなんていうか……気まずい(本音)。
「成程、そういうことか(乾の言っていた意味が漸く理解出来た)」
『狽、ええええ、国光!?いつからいた!?』
「国光の馬鹿ぁ…からだ」
『剥ナ初からじゃん!』
うええええ、恥ずかしい!
「…すまなかったな、俺もついムキになっていた」
『…本当にそう思ってる?』
「ああ」
『…じゃんけんぽん』
国光→グー
美香→パー
『…へへ、勝てたからいいよ!でももう嘘吐くなよ国光。信頼してるんだからな』
「ああ、約束しよう」
うんうん、でもジャンケンに勝つために乾にまで聞きに行くなんて、国光ってばほんと負けず嫌いだなあ!
「…………でもやはり」
『ん、なんだい国光』
おまえに負けるのは気に喰わない
だから、次は正々堂々勝利を奪いに行こうか
『…ちょっと、今部活中でしょ?』
「うん、そうだね」
『だれかあの親子だかバカップルだかをなんとかしてきてよ』
「「「無理!」」」
『泊ヲ答!?あーもう、部活サボってるそこの二人グラウンド20周〜!』
「済まない。葉樹の言うことももっともだ、走るぞ#naame1#」
『マジすか!』
「ああ、マジだ」
『(く、国光が"マジ"っつった!)』
結局葉樹にグラウンドを走らされた僕らでした。
「「「(ぶ、部長を走らせるなんて…葉樹さんすっげえ!姉御!)」」」
ちなみにその日の部活中、葉樹は姉御と呼ばれてました。
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