※リョーマが葉樹のことが好きなの前提。
まだ寄りキャラ未定なのでリョマ→美香がいいかたは閲覧注意!
卒業式も終わったある日。
春休みも決して休みになることのない運動部は、それぞれの活動場所で練習に励んでいた。
もちろんそれは俺の所属するテニス部もかわらないわけで。
最近暖かかったけど今日は少し肌寒いな、と思いながら視線をなにげなくコートの外に移せば、ここにいるはずのない人物の姿を捉えた。
「っ!」
なんでここに?
いや、卒業生だから別にいても違和感はないけれど。
とりあえずは練習に集中して、海堂部長の「休憩だ!」の言葉とほぼ同時に彼女の元へと駆け出した。
「葉樹センパイ!」
『あれ、リョマ?』
「なんで此処にいるんスか?」
追いついた彼女に声をかける。
卒業式からまだそんなに日もたっていないのに、ただ会えただけでこんなにも嬉しいなんてそろそろ俺はヤバいかもしんない。
『いや、買い物の帰りに学校の前通ったら、なんだか懐かしくなっちゃって』
ついこないだのことなのにね、とはにかむ葉樹センパイの手には、確かに買い物袋のようなものが握られている。
「美香センパイは?」
『ふふっ、別にいつも一緒にいるわけじゃないよ』
確かに一緒に暮らしているかといっていつも一緒に行動している訳じゃないか。
でも、部活中のセンパイたちの姿ぐらいしかしらない俺は、いつも一緒に頑張っているセンパイしかしらない。
同じクラスの、同じ学年のセンパイたちは俺よりも沢山のほかの姿を知ってるんだろうな、そう思ったらなんだか無償に悔しくなった。
『それより部活は?』
「今は休憩中っス」
『そかそか。練習頑張ってる?』
「ん、まあね。とーぜん二連覇狙ってるし」
『狽ナたタメ口…!ヒヨくんといい財前くんといいリョマといいなんだこのウチに対するタメ口率!!!』
「(むっ)」
葉樹センパイから他の学校の生徒の名前が出てくるだけで嫉妬してしまいそうになる俺は、もう末期かもしれない。
「それより高校はどうっすか?」
『ん、綺麗なところだったよ!流石に私立には負けるけど』
美香センパイは青学の高等部に行くのに対し、葉樹センパイは学費を浮かせるために、と公立高校を受験したらしい。
美香センパイに相談せずに独断で決めたらしく、そのことを話したときの美香センパイを落ちつかせるのは相当大変だったらしい。
まあ、同じ学校に行くと思ってた親友が違う学校に行くことを選んで、しかもそれが学費のためだなんて言われたら怒りたくもなるよね。
「学費のためでしたっけ?」
『そ、よくわかったね!(ほんとは違う理由もあるんだけどね、)』
「でもなんで美香センパイと一緒に行かなかったんスか?」
『………ウチさ、美香のこと大好きなんだよね』
「知ってる」
『そう?』
とぼけてみせる葉樹センパイに続きを促す。
『一年一緒にいてちょっとはわかったと思うけど、多分あのこが思ってる以上にあのこのことが大切で、可愛くて仕方ないんだと思う』
「まあ愛情表現歪んでましたからね」
鈍感で素直な美香センパイには伝わりにくいかもしれない。
『だからさ、ほら、例えば英二と美香が二人で仲良くキャッキャやってるのは見てて微笑ましいな、って思うんだけど、仮にリョマが美香のことが好きで、ちょっと甘い雰囲気になったとする。そうしたら困ったことに防衛本能働いて邪魔しちゃうんだよねー』
あはは、と眉をハの字にして笑う葉樹センパイに、なんでたとえが俺なんスかとは突っ込めなかった。
「それってつまり、」
『まあこの子のこと本気で手に入れたいならまず俺のこと納得させてからにしろばぁかって感じかな!』
「(笑顔で凄いこといった!!!)」
『生半可な覚悟や気持ちじゃ認めてやんねー、変に傷付けるようなら……まあ、売られた喧嘩は買うのが礼儀よね?』
「いろいろ間違ってるっス」
『でもさ、それって結局美香の気持ちなーんも考えてあげれてない。あの子、変なところで遠慮しいで、隠すから。例えば美香がリョマのことが好きだったら?ウチ、ただ邪魔しただけだよね』
「はあ…」
『なんていうのかな、美香は本当に大切な友人なの(彼女としか、元の世界のことを話せないし…)。でも、ウチが依存するのは違うかなって。違う学校にいって、ちょっと美香離れして、ウチが心配しなくてもちゃんと学校生活送れるよって、見せ付けて欲しいっていうか…』
あれ、なに言ってるのかわかんなくなっちゃった!と笑う葉樹センパイは、みてていたたまれない。
「なんでそうなんスか?」
『へ?』
「なんでもかんでも他人優先。だから美香センパイも怒るんスよ」
『なんで、って言われても…』
性格だから?なんて真顔で答える葉樹センパイに、全身の力が抜ける気がした。
「じゃ、俺がいること覚えててください」
『へ?』
「相談ぐらいには、のりますから」
そう告げたら、目を大きく見開いたあとに、俺の頭をぐりぐりと撫でる。
『おう、頼りにしてるぞーリョマ!!!』
いつも、そうだ。
俺より少し上の目線。
暖かい手。
優しく俺を見つめる目。
どれも全て、俺を「男」としてはみてくれない。
なんだか悔しくて、思わず握りこぶしに力がはいる。
『っくしゅん』
「寒いんスか?」
『ん、ちょっとね』
いわれてみればセンパイは薄着だ。
最近暖かかったからね…
ふわり。
『へ、』
「俺のジャージ。特別に貸してあげるっス」
どうせ練習で暑くなるし、と付け足せば、じゃあ遠慮なく、と肩に羽織る葉樹センパイ。
「お礼はファンタでいいっスよ」
『狽ヲ、レンタル料発生するの!?』
「嘘。じゃあ―――」
ちゅ。
背伸びして、葉樹センパイの額に口付ける。
『な、なななななな…!!!』
「これで勘弁しといてあげる!」
真っ赤になってる葉樹センパイを見て優越感に浸りながら、練習へと戻った。
どんなに俺が頑張っても、決して追いつくことのない歳の差は、いつまでも俺が年下で。
どうあがいたってこの差はかわらない。
ならばせめて身長は、あんたを追い抜いてみせるから。
だから、ねえ、葉樹センパイ。
俺を弟のように可愛がって、余裕でいられるのも今のうちだよ?
覚悟しといてよね、センパイ。
届かない距離埋めたい差・
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