メトロン×クリプト


ピンク色の小さめの風船にメッセージカードをくくりつけ、ひとつひとつそっと手を離していく。小さな夢を乗せた風船は、ふわふわと風に遊ばれながらぐんぐん空へ上っていく。

今日みたいなスカイブルーの空に、ピンク色はよく映えるわね。

最後のひとつを手放してうんうんと満足気に頷く私の隣で、一部始終を黙って見ていたメトロンがようやく口を開いた。

「風船なんて飛ばして、どうするんですか?」

「うーん、ちょっとね」

あのまま空高く昇って、大気圏を突破して、そのうち宇宙まで行って。そうしていつか、私たちのあの星まで届くといいなって思ったの。
そう言うと、メトロンは珍しいものでも見たかのように目を丸くしていた。

「クリプトにも女の子らしいロマンティックなところ、あったんですね」

「あら、女の子はみんなロマンティックに憧れるものよ」

白馬の王子さま然り、運命の赤い糸然り。ロマンティック様々なんだから。
ふふ、と軽く笑ってみせると、メトロンも笑い返してくれた。

けれど本当は知っているの、ゴムでできた風船の限界なんて。大気圏にたどり着く前にしぼんでしまうことも、ましてや到底私たちの星まで辿り着くなんて不可能だってことも。やがて地に落ちる風船と同じように、私たちにはもはや故郷に帰る術なんてないことも。
でも、それでも。

「ねぇ、クリプト」

「なに?」

「将来さ、宇宙船買おうよ。ピンクの丸い宇宙船」

そしたらまた、宇宙旅行しようよ。二人でいろんな星に遊びに行って、写真とかいっぱい撮って、おいしいものたくさん食べて。それで最後は、みんなと一緒に飛び立とうよ。

「…メトロン、」

「ん?」

「あなたも大概ロマンティックなのね」

「うん、でも、嫌いじゃないだろ?」

「ふふ、もちろんよ」


二人で笑い合いながら、いつになるのかわからない未来の話に花を咲かせる。
もうとっくに肉眼では確認できなくなったはずのピンク色の風船が、遥か遠くの方でちらりと揺れた気がした。




ユメロケッツ

(Hello my dream&Good-bye my sorrow!)








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タイトルは好きな曲から
25のおかげですっかりイプシロンのイメージに
メトロンはクリプト相手だと男らしくなってくれていいですね。メトゼルはなんであんなにヘタレなんだ







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