緑川×風丸


「え」

聞き間違いじゃないかと思って、素っ頓狂な声を上げてしまった。

「だから、明日空いてるか、って」

そう聞いてきたのは風丸だ。
どうして風丸がこんなことを聞いてきたのかというと、心当たりはある。話は数日前に遡る。

────数日前のこと。

俺は勇気を振り絞って、やっとの思いで風丸と出掛ける約束をした。それなのに何故か出先で壁山やリカさんたちに遭遇してしまい(しかも円堂と久遠さんのデート?現場も目撃した)、結局そのまま壁山たちと一緒に行動したため、当初予定してた映画や買い物はほとんど行けず仕舞いだったのだ。
その帰り道に、確か、

「悪いな、いろいろ買いたいものとかあっただろ」

「いや、面白いものも見れたし楽しかったよ」

「ああ、円堂たちか。あいつらよくやるよな…じゃなくて、うん、それはそうなんだけどさ、」

「?」

「ほら、せっかくチームメイトになったんだし、もっといろいろ緑川と話してみたかったんだ」

俺たちあんまり話したことないだろ?
照れくさそうに言う風丸の頬が少し赤くなっていて、俺もつられて赤くなってしまった。今日はきれいな夕焼けでよかった。
いつも凛々しいイメージの風丸がたまに見せるこういう表情って、すごく可愛いと思う。

「だからさ、また今度どこか行こうぜ」

「もちろん!」

─────なんて流れがあったのだ。
その時はいわゆる一つの社交辞令だと思っていたけれど、まさか本当に誘ってくれるなんて!人生苦あれば楽あり、信じる者は救われる!

「もちろん、空いてるよ」

嘘。
本当はディアムと会うつもりだった。でもこんなに嬉しい誘い、断れるはずないじゃないか!ディアムには悪いと思いつつ、脳内で予定変更する。あとで電話して謝らなくちゃ。

「よかった、じゃあ明日11時に駅前集合な」

「うん、了解」

そこで丁度休憩時間の終わりを告げる監督の声がグラウンドに響いた。
美味しいパスタの店があるから明日案内するよ、遅れるなよーと手を振りながら風丸が元いた場所に戻っていく。風丸もね、と手を振り返す俺は、きっと満面の笑みだ。
だって、緑川、なんかいいことあったの?気持ち悪いとヒロトに言われたから。

「なんでもー!ふふ、ヒロトには教えない!」

「何それ気になるよ!」

教えて教えて!と絡み付くヒロトをひっぺがし、明日に向けて高ぶる気持ちをボールにぶつけるように、天高く蹴り上げた。




飛び出せ青春!
(どうしよう、きっと今夜は眠れないよ!)


「あ、もしもしディアム?明日なんだけど、ごめん、風丸から誘われて…」

『そっかー風丸かー。残念だけど風丸ならしょーがないな』

「今度、絶対埋め合わせするから!」

『いいっていいって、こないだの初デート?大変だったみたいだし。明日のデート楽しんできなよー』

「…!さすが竹馬の友、ディアムありがとう!」




‐‐‐‐‐

ディアムは前回の緑川の落ち込みっぷりを知ってるから風丸の約束の方を優先させました。
友達思いのいい子だって信じてる。







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