メトロン→ゼル
「おはようございまーす!ゼルさん今日はいい天気ですよ、一緒にデート、じゃなかった買い物行きませんか!」
バターン!
勢いよくドアを開けてゼルさんの部屋に押し掛けた、日曜の朝。
まだ寝てるかも、もしかしたら寝顔とか見れちゃったりなんかして!という甘い考えは即座に打ち砕かれた。
「メトロンか。無理。帰れ。」
だってすでにデスクワークしてるんだもん!
片手にペン、目線は俺にはさっぱりわからない書類。後ろから覗きこんだらたくさん数字が書いてあるのだけがわかったから多分、決算書辺りだと思う。せっかく練習も休みでこんなに外出日和なのに朝から仕事なんて、勿体ないなぁ。
完全に集中モードに入ってるゼルさんにひらひらと手を振られて、無言で出てけと言われる。ふふふ、そんなことじゃこのメトロンはめげないですよ!
「じゃあ終わるまで待ってます。まだ1日は始まったばかりですから!」
そうしてちょこんとゼルさんの横に座り込むと、はぁぁと盛大なため息をつかれた。あ、ため息ついたら幸せが逃げちゃいますよ。
「てめぇ誰のせいだと思ってやがる」
まあゼルさんの分の逃げた幸せはいつか俺が百倍にして連れ戻してきますけどね。なんて考えながら、集中が途切れたのか、心底ダルそうに頬杖をつくゼルさんをガン見する。
はあぁ、イケメンは何をしててもイケメンなんだな…。
ちなみにゼルさんは、さっきから一度もこちらを向いてくれてない。横顔も格好いいからいくらでも見続けることはできるけど、こんなに見つめてるんだから、一度くらい見てくれてもいいと思わない?つれないなぁ。勿論そういうところも含めて大好きですけど!あ、なるほど、これがいわゆる流行りのツンデレってやつか!ふふふ、かーわいいなぁ!全然デレがわからないけどね!
そんな熱い思いが通じたのか、もう一回大きなため息を吐いて(今度二百倍にしてお返ししよう!)ゼルさんが俺の方を見てくれた。
ゼルさんの赤いビー玉みたいな目に自分が映っているのが見えて、嬉しくなる。こんな小さなことでも胸がキュンとなるなんて、自分でもびっくりするくらいゼルさんのことが好きなんだな。
「いいかメトロン、」
「はいっ!なんでしょうゼルさんっ!」
「今から俺の気持ちを言ってやる」
15文字で
(君から僕へ贈る言葉)
「うぜぇ失せろ消えろ去ね近付くな、以上」
「辛辣!!」