グラン+バーン(ほんのりバン→ガゼ)
「おい、ちょっといいか」
練習もなければマスターランクの集まりもない、このゆるやかな午後の一時をどう過ごそうかとのんびり考えていると、冒頭の言葉と共にノックもなしにドアを開けられた。
こんなことをするのは、俺の知る限り二人しかいない。
「ちょっと、ノックぐらいしてよね、」
バーン、と燃え盛る炎のような赤い髪と(チューリップみたいな)逆毛が特徴の彼に声を掛けた。
彼はあ、わり、とは言いつつも別段悪びれたそぶりも見せず、ずかずかと部屋に入ってきた。バーンらしいと言えばそうなんだけど、もう少し親しき仲にも礼儀ありっていうのを知ってほしいと思う。
でもガゼルならともかく、バーンが俺を尋ねてくるなんて珍しいな。
「で、どうしたの?」
話を促すと、どっかりと我が物顔で俺のベッドに座るバーンの表情が曇った。
「実はさ…」
「うん」
さっきまでのあの態度の大きさはどこへやら、急に真面目な空気を纏った彼につられて声のトーンが下がる。
「俺、」
「うん」
「病気かもしんねぇ」
「う……ぇええ!?」
僕らの健康は最新医療システムで管理されているし、館内は抗菌仕様だし、他にも他にも内部は疎か外部のウイルスも入り込まないように厳重にガードされているはずなのに、まさか健康第一なバーンが病気だって!?
いやでも待てよ、バーンも俺と同じくらい地球に遊びに行ってるし、もしかしたら万が一の可能性もあるのかも…!
「あー、そういうんじゃねぇんだ」
「へ?」
「なんか、胸の辺りが苦しいんだよな」
いやそれってやっぱり病気じゃないの、と言い掛けて、続く彼の言葉に唖然とした。
「特にあいつ、ガゼル見てると苦しくなるんだよ。ガゼルがダイヤモンドダストのメガネとか奴らと話してるとムカムカするし、目が合うとドキドキするし、なんか考え込むの見てるとハラハラするし、笑ってる顔見るとキュンってなるんだ…どう考えても病気だろ!?もしかして俺ガゼルになんかうつされたのか!?」
なぁグラン!と同意を求めてくる彼に、くらりと目眩がした。
俺様男の本気の恋
(こんな感覚初めてでわかんねーんだよ!)
「それはもう、あれだね」
「あ?」
「御愁傷様」
「え、俺死ぬの!?」