染み込む

私は気付いた。
マートルのトイレじゃなくて禁じられた森の方が人に日記が見付かるリスクが低いのではないかと。

あそこに出入りする物好きがいないとは限られない。
急いで取りに行こう。

「何を探してるんだ?」

「………レーシュ」

怒りの表情をしたレーシュが立ち塞がる。

「日記がないんだけど、知らない?」

「し、知らないよ」

「はい、嘘。目を逸らすな」

肩を捕まれ、目の前のレーシュを見つめる。

「………でも、あれが危険なものだってレーシュもわかるでしょう」

「危険なものだから傍に置いたんだよ!目に届くように」

「それでレーシュがこんなになっちゃダメだよ!」

「それでもいい!お前を守るためなら」

肩を掴む手に力が込められる。

「どういうこと…?」

「あれはお前を狙ってる。」

低く呟くように言った予想外の言葉に私は目を瞬く。

「そんな訳ないよ。私に興味なさそうだったよ」

ヴォルデモートがこんな小娘一人に興味を持つなど有り得ない。

「むしろ、レーシュが危ないよ」

「ボクが?」

お互いに顔を見合わせる。
少し、話し合う必要があるようだ。

人気のない場所を求め、八階にある必要の部屋を開く。

「カナデ、何故こんな部屋を知ってるんだ?」

「え、ああ、なんでだろう。でもここなら誰にも聞かれないよ!」

そして話し合った。
レーシュとヴォルデモートのこと。
リドルが私を狙っていること。

「見事に踊らされてる、とまではいかないが、奴の掌の内にいたんだな」

悔しいけど、とレーシュは言った。

「リドルが私を狙う理由が未だに理解できないんだけど」

「ボクだってよくわからないんだ。というか、あいつが最初からお前を知っていた。それが一番解せない」

「そりゃあレーシュより先に会話してたからじゃないの?」

「いや、あいつはお前が純血だってことまで知っていた。そんなこと言ったか?」

「言ってない」

話し合っても謎は深まるばかりだ。

「ていうかレーシュ、ヴォルデモートとのこと気にならないの?」

「いや、ボクは元々赤い目じゃないから。というかこの目の色、去年はこうじゃなかっただろ」

去年のレーシュの目の色が思い出せない。
赤い目で定着し始めている。

「そもそも、これはヴォルデモートに攻撃されてこうなったんだ」

意味のわからない魔法をかけられてね、と溜め息をついて瞼を閉じたレーシュ。

「だからボクは孫でも息子でもない」

「でも、あんなに似てた」

「待て。あいつは姿を見せたのか?」

「うん、レーシュにそっくりだった」

「………日記は今どこに?」

「マートルのトイレ。待ってて、今取ってくる」

トイレに急いで向かう。
日記を探せど探せど、ない。

「誰か持っていっちゃったんだ!」

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