はみ出した魔法
三メートル浮けばいいとこだよバカヤロウ!
ぴくりとも動かない箒に溜め息を吐いた。
隣のレーシュの箒はしっかりと彼の掌に収まっているのを見て、気持ちはまた沈んでいく。
これじゃあ魔法少女と名乗るのは夢のまた夢だ。
いや、もうノリで言ってるんだけども。
それでもこんなんじゃあ口先だけだと思われてしまう。
なんか嫌だ。
「落ち着いて」
「え?」
「落ち着いて、箒は個性はあるけどお前に応えてくれるはずだ」
「………うん」
レーシュが穏やかな声で言った。
なんだか安心して、箒が浮いてくれるような気がしてきた。
「大丈夫」
「うん、大丈夫」
右手を箒の上に翳す。
「上がれ!」
ふわりと箒は飛んで私の掌に収まった。
「できた……!」
「出来たな」
「ありがと、レーシュ」
「ボクは何にもしてない」
「なにそのイケメン」
もとからイケメンなのに更に増してイケメンに見えたわ。
「なんかあっちで青春してるな、ハリー」
「仲いいよね」
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