手を取り合って走る。
走る、走る。
ちらほらと灯る光は村人たちの行灯か。
カミサマ、カミサマと呼ぶ声が聞こえる。
カミサマが消えたことに早くも気付いたのだ。
いや、それよりも…。
手を振りほどき、立ち止まって少女は少年に問いかけた。
「ねえ、カミサマがいらないって村人たちは…」
「了承はしていないね」
「なら、どうして!」
私を連れ出したのか、と少女は叫んだ。
「……………この村の風習を終わらせるためだ」
カミサマなんて呼ばれても、君はただの人間だ。
少年は少女に言い聞かせるような口調で話す。
「君も知っているんだろう?自分が村人たちと変わらない人間だって。疑問に思わなかったのか?どうして自分だけが社にいるのか、外に出られないのか、って」
「し、らない。だって私、ずっとあの場所にいたんだから…そんなこと思ったりできない。」
それが当たり前なんだから。
そう呟いて少女は迷うように目をさ迷わせた。
「いや、嘘だ。君は外に出たことがある」
「……………なんで!」
断定した言い方に目を見開いた。
「何を思って、なんて一つしか考えられない。外に出たかったんだろう」
「…………………………。」
「知りたかったんだろう?自分の知らない世界を。あの時は失敗したけど、今なら大丈夫だ。」
「今なら………」
「これを逃したら君は死ぬまでカミサマで、ずっと社で生きていくことになる。」
君が選べ、と振りほどいた手を差しのべられる。
村人をとるか、自由をとるか。
本当に、これが最後の選択なのだ。
「私、は……………」
少女は少年の手を取った。