美少年をプロデュースしたくて! | ナノ
 人魚姫ぱろ

その人を助けたのは、きっと運命だった。
たとえそれが悪いものでも、良いものでも、構わないと思ってしまったのだ。

海に投げ出された人間は、水の中では呼吸ができないから死んでしまう。
そう頭に浮かぶ知識は陸の世界に興味があったから。

そうだ。
この人間を助けて、陸の世界について教えてもらおう。
陸の世界は美しいものが沢山あるだろう。
海に流れ着くものは見たことのないものばかりで、たまに見つけるお宝は全て大事にコレクションしているのだ。

流れ着くものだけでは物足りない。
そう思ってきていたから、これはチャンスなのかもしれない。

さてさて、船から投げ出された運の無い人間の顔を見てやろう。
陸まで引っ張って一息。
その人間は自分とよく似た髪に、綺麗な顔立ちをしていた。
もしかしたら、目の色も似ているのだろうか?
息をしているけれど一向に起きる気配のない人間の頬をペシペシと叩きながら考える。

……起きない。

やはり海と陸では違いがあるから、人間は寝た状態が基本なのかもしれない。
いや、でも動いている群れを見た事があるなあ。
こんなに間近で人間を見るのは初めてだからわからない。

もう一度、頬をペシペシ叩いてみようか。
そう思って手を頬に当ててみた時、閉じられていた目が瞬きをした。

目があった人間の色は、私と同じ色だ。
驚いた表情をしているその人を見て、私は衝撃を受けていた。

同じ色なのに、きらきらして見える。
どうしてこんなに違って見えるのか。

私はどうしてこんな気持ちになってしまったのだろう。
この助けた人間に陸の世界の事を聞くつもりだったのに、何故だかここに居られない気がしてくる。
何か喋るために開かれた口。
人間が言葉を発する前に、私は海に飛び込んだ。

…………数日考え込んだ私はつまるところ、陸の世界に自ら行けば大体の事が片付く気がして色々な噂のあるあからさまに怪しい魔女の家を訪ねた。

魔女は私に人間の足を与える代わりに、私の声を差し出せと言う。

「ちょっと確認したいんですけど、もしかして私に誰かから取った足を下半身を切断してからつけるつもりですか?それとも私のヒレを足に変身させるんですか?」

「魔女だと知って来たんだろうお望みなら切断してつけてやるわ小娘」

「ひえ……」

なんて野蛮な魔女なのだろう。

「でもおばさん、私の声をとってもおばさんに私の声は似合わないと思うんですけど」

「お黙り小娘」

「姪っ子なのに」

そんなこんなで声と引き換えに人間の足を手に入れた私は、陸に上がって三秒で出待ちしていたあの日助けた人間に捕まったのだった。



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