(第三者視点/R15)
源田の涙をあきが着物の裾で拭う。情けないなと笑ったのもつかの間その表情は硬いものに変わった。
「いいのか?」
「いいも何もそれが仕事だっての」
不動が呆れたように笑う。源田は戸惑いからかそっと手を伸ばして不動の頬に触れた。
「寝たことあんの」
「いや…。知識はまあ、あるが」
「やらし」
一度も抱いたことなどない源田の不安も唇を重ねた途端に消えた。
「ん」
思ったよりも柔らかいそれに源田は理性が崩れていくのを感じた。何度も角度を変え味わうように接吻する。唇を離す度に漏れる声が源田を煽った。
「っ、ふ…は…」
「あき」
歯列を割って舌を捩込み絡め取る。唾液が混ざり合って不動の顎を伝う。力の抜けてきた身体を源田がゆっくりと押した。「あき」唇を離してもう一度源田が呼んだ。
「不動って呼べよ」
「…不動」
押し倒したせいか着物がはだけて白い肌に月光りが落ちた。流れるように鎖骨に影が落ちる。不動の大きな翡翠はやはり月光りにゆらゆらと光った。源田は白い首に噛み付くように接吻した。不動が短く息を呑む。顔を上げれば青白く照らされ鬱血痕が艶やかに花開いた。背筋に走る快感に源田は喉を鳴らす。
「やっぱり、お前は昔から綺麗だ」
「ん…ぅ」
舌を首から鎖骨まで這わせる。影はゆらゆらと歪んだ。大きな源田の手がゆるりと着物へと入っていく。不動はぴくりと身体を震わせた。
「う、あ…っ」
「男でも感じるのか?」
厭味でもなくただ疑問に思ったことをふと口にした源田を不動は睨みあげる。源田は困ったように笑うけれど手は胸をまさぐった。反対の手で着物を剥がす。腰辺りまであらわになったその身体を見下ろして源田は壊れ物に触れるように指を滑らせた。時折不動の声が漏れる。真っすぐに見つめ綺麗だ、と源田が零す。今度は困ったように不動が笑った。
「ひっあ」
「ん…不動」
遠慮がちに胸に舌を這わせ反対側は指を這わせ続ける。舐める舌はだんだんと転がしたり吸い付いたりと変わっていき甘噛みした時に不動が嬌声をあげた。腰に添えられていた掌は再び器用に着物を剥ぐ。今度こそ一糸纏わぬ姿になった身体に掌を這わせ内股を撫でた。
「あっ…は、んっ…」
「不動、気持ちいいか?」
「は、あ…っ源田…」
もどかしそうに身をよじる不動を熱く見つめ愛撫をやめ、源田はゆるりと高ぶりに触れた。手を滑らせる。水音が響いて二人の耳を犯した。不動の細い腰が何度も跳ね上がる。
「あっ…あ、んっひ…ぁ」
喘ぐ不動を横に寝かせて蕾に濡れた手を伸ばす。指を入れるとゆっくりと埋まっていく。不動が苦しそうに喘いだ。細い指が布団に縋る。それすらも愛おしいとでも言いたげに源田は腰に唇を落とした。
「んあっぁ!げん、だ、あ…んっ!」
段々と熱を孕んだ声に変わったのを見計らい源田は自身の高ぶりを宛てがう。
「不動、」
一度ゆるりと願うように閉じた瞳を開け源田がぼそりと耳元で囁いた。
「好きだ」
「ん、く…うっあッ!!ひっ…あ、は…あんっ」
「くっ…は、不動」
貫かれ間髪入れずに腰が揺らされ喘ぎ声は留まることを知らない。
「げんっああっ、源田っ!あッも、あ…っんん!」
「は、っ…不動」
「ひ、や…んあああああああッッッ!!」
「くっ、あ」
互いの身体が一段と大きく揺れる。甲高い嬌声を最後に不動の意識はどろりと暗闇に落ちていった。