「相変わらず跡部の部屋は日当たりええなぁ」

七階建てのビルの最上階である跡部の部屋は相変わらず眺めがいい。自分が住んでいるボロアパートとは訳が違う。

跡部の隣に、近くのコンビニで買ったデカプリンを置く。

仲直りのきっかけになればええ、なんて甘いことを考えていたんやけど、跡部は布団から出る気はなさそうで、プリンだけが積み重さなっていくだけや。

「なあ、跡部。いいかげん布団から出てきてくれてもええんちゃうん?」

そう言っても相変わらず綺麗な寝顔をしているお姫様は、なんも返してくれへん。

あの日からずっと。



Good-bye、よい目覚めを



 ―――は、留学?



 ―――おう、三年ばかりドイツに行くことになった


 ―――…ハハ、景ちゃん、俺、笑えん冗談は嫌いやで?


 ―――冗談じゃねえよ、最近決まったことだがな、三年日本には居ねぇが、俺達なら大丈夫だ、ッンン



跡部の言葉を遮ってキスをした。



 ―― どうしたんだよ、侑士


 ―――『大丈夫』なんて言葉聞きたない、そんな確証あらへんやん、


 ―――バーカ、俺がテメェを好きのは何処に行っても変わらねえよ


跡部は眉を下げあきれたように笑う。跡部の言葉は多分、本当やった。けど、


 ――どうしても行くちゅうなら、俺と別れてくれや

 ――ハッ…?なに、言ってんだ、よ

 ――それでも、行くん?

跡部は一瞬驚いたように目を見張り、そして、一言。




 ―――――『悪い、忍足』


 ―― …ハハッ、がっかりや


前も見ず、飛び出した。トラックが、余所見運転をしてたなんて気付かずに。


 ―― 侑士ッ!



跡部の叫び声の後聞こえたのは、凄い大きさ衝撃音と誰かの悲鳴。俺は全身の痛みに耐えられず、意識を手放した。



そして、数日後。


病室のベッドで聞いたのは跡部がもう永遠に目を覚まさないという事実だった。



 ◇ ◇ ◇




「跡部、…今日な、がっくんがな、」


笑いも怒りも出来ない彼の頬撫でる。その顔は相変わらず綺麗や。

本当なら彼は、こないな所で眠っているべきではなく、綺麗な嫁さん貰って、子供と幸せに暮らす、そないなる筈やったのに。

全部、俺が奪ってしもうた。

「…今日はな、跡部にサヨナラ言いにきたんよ、」


涙をふき、窓を開ける。真っ赤な夕日が入り込んだ。


「――先に神様に会って、頼んで見るわ、やから、目、醒まし?」



落下していくなか、走馬灯のように駆け抜けたのは跡部の笑顔やった。






――――

――…





「…侑士」




「2031号室の患者さんが意識を」






なあ、跡部、最後に我が儘言ってええやろうか。


目を醒ましたら、俺なんかの事を忘れて、






―――笑ってください



そして、願わくば


また出会えることを。



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