拍手を。お芝居は終わりだ。
―――アウグスティヌス
俺の部屋に突如としたセーラー服の少女の名は杏加浦らしい。ちなみに年は16歳。他は割愛して、なぜ俺の部屋にいたのかと言うに――――
「遠い親戚で、込み入った事情によって住む家がなくあの母親がサンライズ・レジレンスに入れず俺に寄越したって」
「はい」
「ちなみに、込み入った事情って言うのは?」
「一身上の都合により黙秘します」
「へえ、」
「そう言うわけで、これから数日間よろしくお願いします」
礼儀が行き届いたようで、ちゃんと頭を下げて挨拶をする少女を俺はしばらく眺めていた。そして、ひと間。ゆったり休めるはずの休日の初っぱなから飛ばされて追いつけなかった頭がようやく追いついた。「いや、おかしいだろ」
言えたのは、その呟き一言のみであった。
とりあえず、朝飯食うか。と、言えば杏はすこし驚いた顔をしていた。ちなみ、杏と早くも下の名で呼んでいるのはあいつ自身が「棗さんと呼びたいので、棗さんもどうぞ杏と呼んでください」と申し出たからだ。他に他意はない。
目覚まし時計の針を見ると、時間は7時を過ぎていた。朝は朝で良いのだが、休みでしかも昼間で寝ようと思っていた俺にとったら大破産のような気分だ。特をしない。ああ、その点とも。
しかし、ああだこうだと言っていても目が覚めて今から2度寝するにもそんな感じにもなれそうにもない。加えて腹も空いてきた。それに、杏もなにも食べていないのは確かだろう。
だからこその朝食だ。
「豪華なものなんか絶対に望むなよ。って、なにがあったか……」
スウェットのままのろのろと寝室からキッチンに向かう。あいつは俺のあとをついてきた。まるで、餌をもらおうとついてくる野良みたいだった。
冷蔵庫の中を覗けば、それはまあ見事になにもない状態だ。元々料理なんて面倒でしない質故にのこと。水とビールさえあれば生きていけるのが、大人の男だ。
仕方ない、今日はコンビニで買ってくるか。
「なにもないからコンビニ行くが、なにか食べたいのあるか?」
「………おにぎりが、食べたいです」
最近の子には珍しく白米派であったとは。