ある思想家の墜落 | ナノ


 花に嵐のたとえもあるぞ。さよならだけが人生だ。
 ―――井伏鱒二



 ―――ジリリリリリリ。
 朝の騒がしい音の始まりが鳴り響いている。つい寝る前の癖で、いつものように目覚ましをセットして寝てしまったのだろう。
 昨晩の俺はもう疲れきっていた。
 どうしてあんなに疲れていたのか、いまいち思い出せないが体にのしかかる気怠さが裏づけの役割を果たして理由原因はいささかどうでもいい。おそらく仕事で気力を使い果たしてとかだろう。おぼろ気な記憶だが上司が「明日は休め」と言っていた気もする。あー、それでも本当に休みかいちよう確かめないとならないか。
 心身ともに休養を求めている。つまり、ずっと昼ぐらいまで寝ていたい。
 しかし、本当に休みか曖昧なまま今日を過ごして実は休みじゃなかった場合、明日が怖い。社会人たる者、何事においてもしっかりしておかないとならない。いきなりクビになることはないが、色々と面倒がついて回るだろう。
 ああだこうだと悩みながら未だ鳴り続ける目覚ましの器用に切って、やっと身を起こす決心をつけた。
 かばっと上半身を起き上がらせてベッドサイドに置いてあったスマホを探す。あった。手に取ったスマホはメールがきていると知らせるランプがチカチカと光って開いてみると、「今日は休め」と書かれてあった。
 やっぱり、休みか。
 よし、2度寝でもするかと思いながらスマホを元あった場所に置こうと――――

「え、」

 いま、俺の部屋におかしなものが………。


「おはようございます」


 セーラー服の少女が笑って、俺の部屋にいた。
 手から滑り落ちたスマホが落ちた鈍い音が響いたのだった。





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