ご機嫌な綱手がサクラを引き寄せ、半分座ったような目でサクラの顔を覗き込んだ。

「なんだぁお前。全然飲んでないじゃないか」

 片手にサクラ、もう片方の手には酒瓶を握っている。

『ばぁちゃんナイスだってばよ!』

 ナルトはサクラが男と離れた事にホッと胸をなで下ろし、綱手に心の内でナイスガイポーズを向けた。

 額が付く勢いで綱手に至近距離から見つめられているサクラは苦笑いを浮かべている。

「今日はお前の誕生日だろ?これからは堂々と酒が飲めるんだ。めでたいじゃないか」

 綱手はそう言いながら満面の笑みで、サクラのグラスに酒を注いでいく。

「さあ飲め」

 サクラの肩に手を回したまま、極上の笑顔で綱手が言う。サクラは貼り付けたような笑顔で目の前のグラスをじっと見つめている。その笑顔がヒクリと引きつった。

「綱手さま!」横から聞こえるシズネの声を遮るように綱手は続けた。

「やっと二十歳になったんだ。今日はたっぷりと飲め。まぁ何かあってもシズネがいるから安心しろ」
「綱手さま!何言ってんですか!」

 そんな二人のやりとりの中、サクラはゆっくりとグラスに手をのばした。

「師匠。頂きます」

「サクラ、無理しないで」
「よぉ〜し。それでこそ我が弟子だ」


 意を決したようにサクラがグラスに口をつけた。



「うっわ…サクラの奴、大丈夫かぁ?」

 ナルトが隣のキバへと視線を移す。

「あいつ今日が誕生日だろ?綱手様が一昨日それに気づいちゃってよぉ、今回の飲み会にサクラの祝いも盛ったんだよ。で、場所も変更」

 ふ〜ん。と相槌をうちながら、ナルトは視線は再びサクラへ向ける。

「あいつが二十歳ってのが嬉しいらしくてよ、綱手様、容赦なく飲ませてんだよ」

 サクラはグラスの半分位の酒を飲んで、グラスをテーブルに置いた。
 その頬は先程よりもほんのりと色付いているような気がする。

「あいつ結構酒強いんだな」

 キバの感心したように呟きを聞きながら、ナルトの視線はサクラだけを見ていた。


「この酒は旨いんだ。たくさん飲めよ〜」
 半分程空いたグラスにまた酒が注がれていくのを見たサクラはため息をついた。

 先程からこの調子でかなり飲まされている。自分の誕生日を師匠である綱手がこんなにも喜んでくれるのはとてもありがたいとは思うのだが、さすがにもう勘弁してほしい。
 視線をずらすと、景色が遅れてついてくる。目を瞑れば空間が歪んでぐらりと揺れる。

 お酒はそこそこ飲める方だとは思うが、もうそろそろ限界だ。


「はい。お水」

 隣に座る先輩のツキヤが心配そうにサクラを覗き込んでいた。

「ありがとうございます……」

 サクラはグラスを受け取り口へと運んだ。



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