貸切の大広間には、何台ものテーブルを繋げた列が三列並んでいる。
 サクラのテーブルは真ん中列の一番前。左の列に座るナルトの位置からはちょうど斜め前方にその姿が見える。

 サクラを見ていたナルトの表情が不満気に曇った。

 先程から、サクラの隣に座る男が気になって仕方がなかった。
 その男はしきりにサクラに話しかけている。室内のうるささで聞き取りにくいのか、男が話す度にサクラは耳を傾けるように近づく。

 二人の顔の距離が近いことも、二人で笑い合う様子も気に入らない。

 何よりも気に入らないのは、サクラを熱っぽく見ている男の眼差しだ。
 その瞳に浮かぶ色が何を意味しているか、分かりすぎるくらいにわかる。

 正直、想いの強さで負ける気は全くしない。
 医療班で一緒になってサクラを見つけたようなぽっと出の男なんか。
 こちらは想い続けた時間はそこらの男どもとは桁違いなのだ。子供の頃からずっとサクラだけを想っているのだから。

 そうは思うものの、サクラの気持ちが自分にあるとは言えない立場では、ナルトもサクラの周りにいる男達と同じ立ち位置なのだけれど。
 視線の先、サクラの耳元で話す男を睨みつけた。

 ナルトの視線に気付いたのか、サクラの視線がふいっとナルトへと向けられた。
 サクラを見ていたナルトの視線は真っ直ぐサクラの視線とぶつかった。

 翠の瞳が自分の視界に飛び込んできた瞬間、ナルトの体の中に大きな音が響いた。
 不機嫌な表情も一気に消え飛ぶ。

 サクラはナルトを見たままで、ふにゃりと柔らかな笑顔を向けてくる。

 ナルトは自分の顔が熱くなるのを自覚する。鼓動も一気に速度をあげてた。

 サクラの笑顔はいつも綺麗だし可愛い。
 いつだってその笑顔に鼓動が跳ねる。
 でも、今日のサクラはいつもと少し違っている。いつものピンとした感じがなく、どことなく無防備な感じさえする。

 その時サクラの肩を抱き寄せるように隣から手が伸びてきた。




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