サクラはナルトの姿を見ると、ふわっと微笑んだ。心なしかいつもよりも頬が淡く染まっていてるサクラに、ナルトの心臓はうるさく音をたてていた。
ドキドキしながらサクラを見ていると、サクラの唇がゆっくりと開いた。
『 お か え り 』
サクラの唇は、ゆっくりと四つの文字をかたどった。
サクラは音の無い言葉を言い終わると、またふわりと笑顔になった。その笑顔に応えるようにナルトも笑みを浮かべたその瞬間、サクラの視線がフイッとそれてしまった。同じテーブルのメンバーがサクラに声を掛けたようだった。
ナルトはサクラの視線がそれてしまった事を残念に思ったが、サクラの唇が告げた言葉が自分の胸を温かくしていくのを感じていた。
いつも里に戻った時に必ず自分にくれるその言葉は、ナルトにとってとても大切なものになっていた。サクラのそんなたった一言が、どれだけ自分に幸せな気持ちをくれているかなど、きっサクラは知らないのだろうけれど。
ナルトはドアに手をかけたままの姿勢でずっとサクラを見ていた。
「ナルトさん、ナルトさんっ」
「えっ?」自分を呼ぶ声に意識が引き戻される。入口前のテーブルに座る数人の女の子達がナルトをキラキラした目で見ていた。
「任務お疲れ様です〜」
「ここ、空いてますよぉ。どうぞ」
口々にナルトに話しかけながら席を勧めてくる。
「あ、いや……えっと」
ナルトはもう一度サクラを見た。医療班のメンバーに囲まれて座るサクラのテーブルには空きはない。
まぁ、空いていたとしても遅刻してきていきなり上座に居るサクラの隣に行くのもどうかと思う。
その時、奥からキバの呼ぶ声がした。
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Angel's Ladder