店の外に出ると、体を包む少しひんやりとした空気が心地よかった。
「少し歩けそう?」
ナルトはサクラの顔を覗き込みながら声を掛ける。目を瞑ったままのサクラが小さく頷くのを確認して、ナルトはゆっくりと歩き始めた。
店を出て少し歩くと小さな噴水のある広場がある。ナルトは広場のベンチにサクラを座らせ、自分も隣に腰を下ろした。
「ばぁちゃんは何してくれてんだよ。ったく……」
「……ん」
小さな頷きのような声が聞こえたと思ったら、ナルトの左肩にトスンと愛しい重みが寄りかかってきた。
ナルトは息をひそめて、肩に乗せられたサクラの頭へと視線を向ける。
斜め上から見下ろすサクラの顔。サクラは目を瞑っていた。長い睫毛が街灯の光を受けて、頬に影を作っている。いつもよりもほんのりと色づいた頬。鼻先を掠めるいい香り。
外に出て少し落ち着いていた鼓動が再び騒ぎだす。
ドキドキとうるさい心臓の音を聞きながら、じっと動けずサクラの重みを受け止めていた。
「……付き合わせて、ごめん、ね」
「ぜ〜んぜん。いいってばそんな事」
申し訳なさそうに告げてきた弱々しい声に、ナルトは二コリと笑って見せた。
サクラはそのまま黙ってしまったので、ナルトも黙って前を向いて座っていた。
ツン ――
僅かに引っ張られるような感覚がした。
サクラと自分との間を見てみると、サクラの指先がナルトの服の裾を掴んでいる。
ナルトは驚いたように目を大きくして自分の服を掴むサクラの手を見ていた。サクラの伏せられていた睫毛がゆっくりと上げられて、少し潤んだ翡翠の瞳がゆらゆらとナルトを見上げてくる。
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Angel's Ladder